再発率8割だから知りたい「肝臓がん」の予後 AIが切り拓くがん治療の最先端

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AIが切り拓く「がん治療」の最先端(3)

 胃がんでは、内視鏡によって撮影された画像を基にAIが判断する取り組みが行われている。AIを用いた画像診断システムは、男女合わせた部位別死亡率が5位の肝臓がんでも開発されていた。

「世界的にみても、肝臓がん患者の約7割は東アジアに集中しており、特に日本と中国に多いのです」

 と言うのは、立命館大学先端ICTメディカル・ヘルスケア研究センター長の陳延偉教授である。

「圧倒的な患者の多さから、肝臓がんに特化したAIのシステム開発を始めようと決意しました。実用化に向けては課題も多く、AIに読み込ませるためのデータが足りません。ベテラン医師がたくさんの場数を踏むように、AIにも数万単位の症例数が必要なのですが、世界をみればグーグルやIBMはお金をかけて色々なところからデータを買収しています。中国でも医療ベンチャーが大金をつぎ込んで開発を進めている。日本は研究レベルでは劣っていませんが、産業化については金銭面のハードルもあって遅れをとっていますね」

 陳氏らによるAIシステムは大きく分けて2つ。撮影されたCT画像をもとに、肝腫瘍が良性なのか悪性なのかを判断するものと、これまでに診断された症例をAIが分析して類似した症例を示してくれるものだ。共に、若い医師の助けになるものを目指したと続ける。

「医学部生と研修医に協力してもらい、AIを使用した時と、そうでない場合で検査の『精度』や診断にどのくらい確信が持てたのかの『自信度』を、10段階評価させました。まず『精度』では、学部生が未使用時で36%、使用時が75%。1年目の研修医は未使用時が50%で使用時が89%、2年目の研修医は未使用時が75%で使用時が89%と、全員が向上しました。そのため、診断の『自信度』も学部生が5・8から7・8へ、研修医も総じて7・8から8・6と上昇したのです」

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