修繕費用は110億円超… 金食い虫「タワマン」のスラム化懸念、その対策例

社会週刊新潮 2018年5月17日号掲載

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キリギリスが多いと

 さらに早く、築4年のときに均等積立方式に移行したと話すのは、東京都足立区のイニシア千住曙町管理組合法人の代表理事、應田治彦氏である。

「それまでは段階増額方式でしたが、管理会社に長期修繕計画を見直してもらうと、工費が28億円から34億円に増えるといいます。そのままの積立では1回目の工事すらできないことが判明し、13年に1戸当たり月額約2万円へと、一気に2倍以上値上げし、全515戸で年に1・2億円を集めるようにしたのです」

 幸い9割の住人の賛成が得られたのは、反対者の声に応える努力をした結果だそうだ。たとえば「管理費の収支を改善すれば値上げしなくてもいいのでは」という声に対し、年間3000万円の管理コストを浮かせる努力をしたという。

「管理会社と交渉し、管理費を年600万円値下げしてもらい、マンション内のミニショップを廃止する代わりに管理人に常駐してもらって600万円。照明をLEDに替え、高圧一括受電にして700万円。エレベーターの業者を変えて400万円削減しました。また駐車場や電動レンタサイクルの貸し出しなどで500万円の利益も出すなどして、3000万円を浮かせたのです」

 要は、住人たちが意識してそれだけのことを重ねなければ、将来の修繕すらままならないわけだ。

「私たちは永住希望者が多かったため均等積立方式にできましたが、湾岸地区や武蔵小杉などは投資目的で購入する人も多いと聞きます。短期売却したい人には段階増額のほうがいいですからね。私は“アリとキリギリス論”と呼んでいますが、いま楽なほうがいいと考える人が多いと、値上げはしにくいと思います」

 キリギリスが繁殖したタワマンはどうなるか。

「修繕もままならず、古くてボロボロになったタワマンなど、誰も買おうとしませんし、借り手も見つかりません」

 最悪のケースをこう想定するのは土屋氏である。

「いま1回目の修繕工事の検討段階に入ろうというタワマンが非常に多い。そして実際に必要な経費が提示されたとき、修繕工事費不足が次々と露呈する可能性が十分にあります。タワマンはディベロッパーにも不透明なことが多く、積立金不足がここまで問題化するとは、建築当初は想定されていませんでした。自分の住むタワマンがスラム化を逃れられるかどうかは、売買や賃貸など物件としての流通性を維持できるかどうかにかかっている。労を惜しまずに学び、信頼できる専門家に早くから相談することです」

 しかし、ただでさえ、ほとんどの中古物件の価格が下がっている昨今。高い積立金を支払いながら、必死に価値を維持しつつバベルの塔に住むのは、「夢」とはほど遠い気もするが。

特集「夢の『タワーマンション』からまっ逆さま! 住民が悲鳴を上げた『修繕費が足りない!』」より

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