元の木阿弥になりそうな「南北融和」ムード 踊らされてはいけない“現実”

国際 韓国・北朝鮮

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元の木阿弥

 そんななか、トランプ大統領が尽力して南北首脳会談が実現の運びとなったわけだが、北朝鮮の政治に詳しい國學院大栃木短大の宮塚寿美子講師が明かすように、

「トランプ大統領は今年11月に中間選挙を控えています。その支持率を上げるために東アジアでなにかしらの成果を出しておきたいとの事情があります。在韓米軍を縮小して予算を下げ、かつ問題ばかり起こす北とも向き合っているという姿勢が必要。つまりは、中間選挙のために外交力があるとアピールしたいのです」

 こんなドライな受け止め方もあるようだ。ふたたび重村教授の話。

「今後、たとえ米朝会談で北朝鮮の非核化が合意されても、トランプ大統領の任期は残り2年しかありません。この2年のあいだに完全な非核化を行うことは無理でしょう。原子炉の停止、核燃料の処分、ミサイルの解体や運搬、査察などには相当な時間を要すると見込まれますから」

 となれば、おそらく元の木阿弥だ。今秋に建国から70年を迎える韓国と北朝鮮にとって分断の歴史に新章を記すどころではない。

「核問題でメインプレーヤーではない日本はトランプ大統領から拉致問題の重要性を働きかけてもらい、北から“解決する”“日本と協議する”との言質をとり、日朝首脳会談にもっていくしかありません」

 たとえ南北融和ムードの幸せが続こうとも、その先にさまざまな困難が待ち受けているのはたしかである。

週刊新潮 2018年5月17日号掲載

特集「『世界卓球』ではルール無視! 『南北融和』で人類はそんなに幸せか」より

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