「麻原彰晃をキリストにしてはならない」 元オウム大幹部・上祐史浩インタビュー

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幽閉の理由

 オウムには麻原のほかに12名の死刑囚がいる。彼らへの執行に反対する声もあるが、

「確かに、マインドコントロールされただけ、上の命令に従わなければ殺されたという主張はあると思います。ただ、それを認めてしまうと『信じた責任』が曖昧になってしまう。自らがその人を救世主だと信じ、その人の指示に従ったにせよ、人を殺したという責任が曖昧になってしまう。また、他の死刑囚に比べて特別扱いが過ぎる。執行は抗えないことだと思います」

 とはいえ、これは同じく麻原を盲信した上祐氏にもブーメランのように当てはまる。かように理路整然と話す中でも、どことなく言葉が他人事に聞こえてしまうのが「上祐話法」。これはこれで、事件当時と変わっていないようにも見えるのである。

「麻原の執行があれば、アレフは存続の危機でしょう。そもそも、私が2007年にアレフから脱会したきっかけの一つは、教団の中で、麻原が事件に関与したことを認め、いずれ死刑が執行されることを前提に、麻原の予言と復活を基にした教義を捨てないとダメだ、と話をしたこと。それによって、当時の代表だった私は事実上の幽閉状態にされてしまったのです。

 つまり、麻原が死刑になるというのは、教団の中でそれだけのタブー。死刑にならないために、ありとあらゆる努力をすることはあっても、いざ死刑になってしまえば、現実に基づいてどう考えるか。その準備がまったくできていないのが実情なのです。もちろん、麻原自身、自分が死刑になった後は、こうすべし、という指示を一切出していませんから、これは彼らにとって大きなショックと混乱を招くでしょう。

 押さえておかなければならないのは、オウムの教義上、唯一、殺人その他を指示できる権能があるのは、麻原彰晃だけということ。つまり、麻原の執行が終れば、それを指示できる者がいなくなるのです。麻原の死はすなわち、オウムのテロの理論的根絶なのです。

 だからこそ、社会は麻原を特別視してはならない。もし過剰反応をすれば、アレフは、世間も教祖を死刑にするべきではない、と思っているのではないかと勘違いしてしまうのではないでしょうか。他の死刑囚と同じように、粛々と刑を執行する。これこそが、犯罪を繰り返させぬために最も必要なことではないかと思うのです」

週刊新潮 2018年5月3・10日号掲載

特集「元オウム大幹部『上祐史浩』インタビュー 『麻原彰晃をキリストにしてはならない』」より

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