「おっさんの全オゴリ会」への招待状(中川淳一郎)

エンタメ週刊新潮 2018年4月26日号掲載

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 4月17日に「おっさんの全オゴリで学生様にタダ酒を飲んで頂く会」というイベントに参加しました。簡単に言えば、「オレら学生と色々話したいのよ。全部オゴるから皆さん是非来てね」という会です。企画者はネットで人気のライター、ヨッピー氏です。

 彼の知り合いの、ネットでそれなりに目立っているおっさんを募ったところ、彼も含めて10人のおっさんが賛同。そして、ヨッピー氏がブログとツイッターで「学生様」の参加を呼びかけたところ、応募が殺到しました。この時の応募フォームには、「話してみたいおっさんの名前」を書いてくださいという欄がありました。

 応募者がフォームに書き込んだ内容がエクセル化され、私の名前を書いてくれた人の中から参加してほしい人を選んでください、という連絡がヨッピー氏からありました。「どう選べばよいのやら」と思ったものの、応募フォームには「ひとこと」欄がありました。

 これが非常に重要なんですよ。「タダ酒飲みたいです」とか「面白いことしたいです」「ワクワクするような会です」みたいなことを書いている人は残念ながら選べません。人数が少なければこれでもいいのですが、あまりにも多いので、ゴーマンな物言いにはなりますが「熱意」「相性」を判断しなくては会の成功は見込めません。

 この時、私が選ばせてもらったのは「酒が強いです」「編集者になりたいです」「フリーでやっていきたいです」「ライターとして一本立ちしたいです」「前向きな話よりも後ろ向きな話をしたいです」「夢を諦め就職活動することになりました」といった「ひとこと」を書いた方々でした。

 せっかく会うのだから私と趣味が合い、互いに話すべき問題について「ひとこと」で言及した方々のお名前に印をつけ、ヨッピー氏に返信しました。

 もしも「ひとこと」がなかったら、「男か女か」ぐらいしか判断材料がないんですよ。ツイッターのIDも明記されていたのですが、過去のツイートを見ても友人との雑談だらけで判断材料にはなりようがない。結局重要だったのは「ひとこと」だったわけです。

 これは、雑誌や新聞のプレゼント欄でも同様のことが言えます。私はプレゼント欄の担当をしたことはありませんが、読者からのプレゼント応募ハガキは、雑誌「テレビブロス」の編集者をしていた頃、自分の作った特集の評価を知るためにも熱心に見ていました。

 すると、かなり多いのがぶっきらぼうで汚い字のハガキです。しかも、苗字と住所は同じで、下の名前が異なる10枚ほどのハガキを同一人物が書いています。家族・親戚の名前を総動員し、懸賞マニアのおっさんかおばさんが“なりすまし”で応募しているのです。

 プレゼント欄の抽選方法の真実をここで明かしますが、寄せられたハガキを抽選箱に入れて一枚一枚引く、なんてことをやっている編集部はあまりないのでは。抽選する人間も、参考になる意見を書いてくれたり、企画をホメてくれたり、生活が苦しいことを明かされたり、その賞品が欲しくてたまらない熱意がプンプン出ている人を当選させたくなります。だから雑誌のプレゼントに多数のハガキを出しても意味はありません。

中川淳一郎(なかがわ・じゅんいちろう)
1973(昭和48)年東京都生まれ。ネットニュース編集者。博報堂で企業のPR業務に携わり、2001年に退社。雑誌のライター、「TVブロス」編集者等を経て現在に至る。著書に『ウェブはバカと暇人のもの』『ネットのバカ』『ウェブでメシを食うということ』等。

まんしゅうきつこ
1975(昭和50)年埼玉県生まれ。日本大学藝術学部卒。ブログ「まんしゅうきつこのオリモノわんだーらんど」で注目を浴び、漫画家、イラストレーターとして活躍。著書に『アル中ワンダーランド』(扶桑社)『ハルモヤさん』(新潮社)など。