一夜で300億円が消えた… “恐怖の金融商品”の後始末

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 株式市場が不安定になれば上昇し、落ち着けば下がる「恐怖指数(VIX)」という数値をご存じだろうか。投資家の心理がリアルタイムで分かることから使われるようになったが、その投資家を“恐怖のどん底”に陥れたのが、VIXを使った金融商品だ。

「私も20年以上いろんな被害を見てきましたが、これほど瞬時に大金が消えてしまったのは初めてです」

 そう呆れるのは、証券取引のトラブルに詳しい本杉明義弁護士だ。

 同弁護士が問題にしているのは、アメリカのVIXを対象にした「VIXベアETN」(以下、VIXベア)という金融商品だ。正確に言うと売買できたのは2月までで、4月から強制的に払い戻しが始まっている。どんなものなのか。

 経済部の記者が言う。

「VIXベアの “ベア”とは、VIXと逆の動きをするという意味です。つまり、VIXが上がると、逆に値下がりするように設計されている。野村ホールディングスの欧州子会社が発行し、日本では2015年3月に上場されています。直近では時価総額で320億円ほどに膨らんでいました」

 それが “突然死”したのは2月6日のこと。米ダウ平均株価が急落した翌日だった。

「VIXベアには、『早期償還条項』(別名・即死条項)というのが付いており、VIXが前日終値から20%上昇すると、運用そのものが終わりになる。当日は、恐怖指数が急騰したことから、VIXベアもそこで自動終了となってしまったのです」(同)

 何とも乱暴な金融商品なのだが驚くべきは損失率で、

「VIXベアの損失率は96%。償還されても顧客には4%しか戻ってきません」(同)

 時価総額でざっと300億円が消えたことになる。

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