順天堂「取り違え」被害者がすべて告白 不倫疑いで両親離婚、母は精神病を患い…

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“金銭で解決したい”

 DNA検査の結果が知らされたのちに時計を進める。16年1月13日、小林さんは順天堂に出向いて「取り違えられたみたいなんですけど」と伝えたという。病院との最初の話し合いがもたれたのは3月3日。

「小さな会議室で“どうやら事実のようです”と告げられました。病院側の出席者は4人。私は“本当の親に会わせてほしい”と訴えましたが、病院側は“それはできない”。院内でも意見は割れたようで、看護部長さんら女性スタッフの間では“公表して引き合わせるべきだ”という意見が多かったそうですが、多数決で公表しないことに決まったというんです」

 順天堂はその方針を崩さず、それが小林さんの拭えぬ不信感の源泉だという。

「取り違えの相手方は平穏に暮らしているかもしれず、その家庭を壊してはいけない、というんですが、おかしいと思う。事実が判明した以上、公表して相手に伝えるのが義務でしょう。それに見た目も性格も違う家族のなかに一人置かれたら、平穏に暮らせないというのが私の実感です。病院の説明では、私が生まれた日に院内にいた新生児は24名。その日に生まれたのは私と、15分違いで生まれた男の子の2人だそうです。だから相手は半ば特定されているのに、順天堂はきれいごとを言って事実を隠ぺいしたんです。4月12日に行われた2回目の話し合いでは、順天堂の顧問弁護士から“金銭で解決したい”と、はっきり告げられました」

 話し合いはその後、数カ月にわたって重ねられ、

「16年12月、不本意ながらも話がまとまり、ほぼサインするだけになりました。ところが年明けに順天堂側の弁護士が代わり、積み重ねてきた話をひっくり返したんです。怒りがこみ上げましたが、長い話し合いで疲弊し、母も“もういい”と言うので、押し切られる形でサインしました」

 その結果、小林さんは金銭こそ手にしたものの、なにひとつ満たされないままだという。

「本当の親が知りたい。それだけなんです。知る怖さはあるけど、知らないでいるほうが幸せだなんてことは絶対にない。近所の親子連れを見ても、親子が出てくるドラマを見ても“俺の本当の両親はだれなんだ”と考えてしまいます。50歳をすぎて本当の親を知っても、いまさら人生は変わらないでしょう。それでも知りたい。仮に私が生まれたとき30歳だったら、もう80歳。時間がないけど、ギリギリ間に合うかもしれない。母だって本当の子供に会いたいはずです。私は最後の親孝行に、母の本当の息子も探したいんです」

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