「新生児取り違え」被害者が明かす“順天堂からの恫喝” 〈守秘義務違反があった場合には…〉

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 人間五十年、下天(げてん)のうちをくらぶれば、夢幻(ゆめまぼろし)の如くなり――。織田信長が好んで演じたと伝えられる幸若舞「敦盛」の一節には、人の世の儚さが謳われているが、ただでさえ儚い50年を、血縁のない世界に置き去りにされ、周囲から爪弾きにされながら生きるとしたら、どうだろう。さながら生き地獄で、想像するだに身の毛がよだつ。

 空想を巡らせているのではない。実際、小林義之さん(51)=仮名=は50年にわたって血のつながりがない環境に放置され、たびたび生き地獄を味わったという。順天堂大学医学部附属順天堂医院のせいで。

 まずは、順天堂医院で起きていた取り違え事件について、本誌(「週刊新潮」)が4月12日号で報じた内容をおさらいしたい。

 それは順天堂の関係者の耳打ちから始まった。半世紀ほど前、順天堂医院で新生児の取り違え事故が起きたが、順天堂はその事実を隠している、と。

 関係者の話はあらましこうだ。東京都内に住む男性が母親から、血がつながっていない可能性を示唆され、DNA検査で、親子の可能性は0%と判定された。出生した順天堂医院に確認を求めると過誤を認めたので、男性は本当の親に会いたいと訴えたという。ところが病院側は、「取り違えられたもう一方の家族は平穏に暮らしている」という可能性を理由に男性の求めを拒み、金銭での解決を提案。男性は取り違えの事実を口外せず、一方の相手を探さないことを約束させられた。

 本当の親を知る権利を奪っていいのか、もう一方の被害者を放置していいのか――。関係者はそう疑問を抱き、本誌に打ち明けたという。片や、男性は本誌の直撃を当初は拒んだが、本誌がつかんだ情報を伝えると深慮し、取り違えの被害者であると認めた。そして、肉親を探すことも許されない苦しみを滲ませたが、順天堂による“口封じ”を理由に多くは語らなかった。

 対して順天堂は、「個別案件の照会には対応していない」と、人の命を預かる名門病院とは思えぬ、木で鼻をくくったような回答を送ってきただけだった。

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