YKK会長、退任後は“山羊のチーズ”作り 本人が明かす

企業・業界週刊新潮 2018年3月15日号掲載

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 貴方が触らない日は恐らくないでしょう。ジーンズのジッパー、バッグのファスナー……。その世界トップ企業であるYKK(本社・東京都千代田区)吉田忠裕会長(71)が、6月の株主総会後の退任を発表した。

 1934年創業の2代目。だがそれに胡坐をかくことなく、「脱東京」と本社の一部を富山県黒部市に移転、「社員は平等」と創業家以外の社長登用、窓サッシ等建材専門の別会社YKK APの設立等々、ユニークな発想で会社を刷新してきた。

 6月以降は取締役として経営を担うが、重責から離れた吉田氏が熱を入れることになりそうなのが“山羊のチーズ作り”なのである。

 実は吉田氏、7年前から創業者の故郷に近い黒部の市営牧場で山羊を飼い、三女の朋美さんをプロダクトマネジャーに山羊のチーズを生産販売する会社、吉田興産を運営する。引退後に没頭できる仕事は何かと考え、辿りついたのが山羊のチーズであった。それにしても、一体なんで山羊?

「単純に、山羊のチーズが好きだったからですよ。YKKとは全く関係のない、家族で経営する会社です」

 とは、吉田氏ご本人。

 少し酸味があり独特のコクを持つ。日本ではあまり馴染みがないが、ヨーロッパなどでは人気の一種。

 そのチーズをもとに、黒部ならではの農業、工業、流通を総合した6次産業を作りたい、目標は本場イタリアやフランスでも認められる一級品――。2014年7月から販売している山羊チーズは、すでにその年秋の国内アワードで銀賞を受賞。15年6月にイタリアのコンテストに出品すると、参加40工房120品中、地元製造者を押さえ最優秀賞と、輝かしい実績を持つ。

「最初は10頭ほどだった山羊も100頭以上に増えました。ただ1日にとれる量は多い時で20キロ程度。限られた牧場の範囲では搾乳できる頭数に限界がある。安定した利益を出すのは難しいですね」(朋美さん)

 吉田興産では、5種の山羊チーズをネット等で通販する。――人生第2ステージも独創力!