ビットコインは「汚いカネ」――NEM580億流出事件で見えた「仮想通貨の終焉」

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ブロックチェーンの強みとは?

質問者2 どういう観点で取引所を選んだほうがいいでしょうか? 私はEthereum (イーサリアム)が必要で、ビットコインの登録を行ったら、コインチェックが最も早く送金できるようになりました。そのために何も考えずコインチェックを使っていました。

中島 コインチェックは使い勝手がとてもよかったというのは私も聞いています。ただ、やはり金融庁の登録制度がある以上は、登録業者を優先して使うのが筋でしょう。私もあれだけ大々的に宣伝をしているコインチェック社が、まさか登録業者ではないとは夢にも思いませんでした。そういう方は多かったのではないでしょうか。

質問者3 会社で古くから使っているシステムがあるのですが、それとブロックチェーンが両立できるかどうか気になっています。現行システムを使い続けるほうが助かるんですけれど、ブロックチェーンの強みをご教授いただけたら幸いです。

中島 中央集権的なシステムが社内で構築されているにもかかわらず、全部をブロックチェーンに替えるのは大変です。現在の状況を見ますと、非効率だったりコストが高いところから替えていきましょう、というのが現実的だと思います。ただ世界に目を転じると、かなりの銀行や証券会社、証券取引所などが実証実験を行っています。こうなると実験で終わらず、だんだん実用化されるものが出てくるでしょう。もの凄いスピードでブロックチェーン化が進んでいく可能性も否定できません。

ビットコインの持つ“価値”はゼロ?

質問者2 再度の質問で申し訳ありません。今は取引単位で税を払う必要があり、税率は最大で50%です。コインチェック社の被害者も円で弁済されると税金が発生するから、仮想通貨で返してくれと訴えていますが、金融商品と同じように税率20%にはならないのでしょうか。FXも50%から20%になったと思うのですが。

中島 将来的には20%に下げる可能性もあると思いますが、今は「資金決済法(資金決済に関する法律)」で支払手段に位置付けたばかりです。税率を変更するにしても法改正が必要ですから、ちょっと時間がかかるかもしれません。

 ただ基本的には、支払のための通貨としてはあまり使われていません。資産として投資の対象になっているので、法律の規制と実態が乖離しているようにも思います。

質問者4 ビットコインの価格は、今後どうなるのでしょうか? また僕はエンジニアなのですが、ブロックチェーンが従来の技術と違うのは、どういうところでしょうか?

中島 ビットコインの価格を考える際、分析などを可能にする投資指標が全く存在しないんですね。株ならPER(株価収益率)といったものがあるのですが、ビットコインは今の100万円が安いのか高いのか判断することができません。

「ビットコインの取引に手を出した社員は即刻クビ」

 そのため、皆が買うと上がり続け、下がり出すと皆が売るため下がり続けるという、価格が一方向に動きやすい特徴があります。最初にビットコインが取引されたのは5セントだったそうです。1ドルもしない時代は長く、100ドルや1000ドルになって中国人が買いまくるようになりました。さらに遅れて日本人が買い出して、今は最も高値をつけていますが、私には1ドルのものを100万円出して買っているような気がして仕方ないですね。

 ブロックチェーンは最近、「DLT(Distributed Ledger Technology)」と表現されることもあり、こちらの表現のほうが、その凄さが分かりやすいかもしれません。日本語では「分散型台帳技術」と訳しています。これまでは中央にデータベースがあり、そこで全員の取引を帳簿に書き記していたわけです。ところがDLTでは、ネットワークの参加者がそれぞれ同じ帳簿を持ち、取引があればその情報が全員の帳簿に書かれるんですね。

 そうすると、中央のコンピューターが壊れても、分散型ですからシステムは守られます。従来型は巨大なコンピューターセンターが必要でしたが、DLTなら普通のパソコンを繋げばいいわけですから、小額の設備投資で済みます。

質問者5 数年前、JPモルガン・チェースのダイモンCEO(最高経営責任者)は「ビットコインの取引に手を出した社員は即刻クビにする」と言って話題になりました。今となっては、その言葉は正しかったのでしょうか?

中島 あれは欧米の金融機関の一般的な見方であって、あの人だけのものではありません。少なからぬ金融機関のトップが「仮想通貨には手を出さない」と発言しています。最近「欧米の金融機関もビットコインの取引に前向きになった」と指摘する声も増えているんですが、あれは顧客の注文を先物の取引所に繋いでいるだけで、銀行として積極的に投資しているわけではありません。「あんなものはやらない」という銀行がほとんどだと思います。

 以上で質疑応答は終了した。目から鱗が落ちた方も、相当な数に上ったのではないだろうか。犯罪者がダークウェブで決済に使うような通貨を、我々のような健全な一般人が手を出す必要があるはずもない。だが日本では、現在でも多くのタレントが仮想通貨のCMに出演している。汚れたカネの宣伝に寄与しているわけだ。自分たちの価値も“暴落”するリスクに気づくべきだろう。

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週刊新潮WEB取材班

2018年3月13日掲載

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