福山雅治マンハント「×」で、染谷将太KU-KAIは「△」 日中合作映画の厳しい現実

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日中合作映画に期待しない日本人

「マンハント」は、資本的には中国と香港の合作映画と位置付けられているが、スタッフの多くが日本人だ。いわば作り手の「日中合作」と言える。だが“話題作”ということになっているはずなのだが、「そんな映画、知らない」という人も少なくないだろう。実際、興行成績も芳しくないようだ。先の大高氏が分析する。

「残念ながら、最初の週末では4位、翌週も6位と厳しい出足でした。第2週で観客動員が半減しており、惨敗と評されても反論は難しいでしょう。このままですと10億円はもちろんのこと、5億円も確保できないかもしれない。私も見ましたが、ジョン・ウー監督らしいアクション満載の娯楽作を目指したのは理解できましたが、古臭い日本テイストが随所にあり、これでは今の目の肥えた日本の観客は満足できないでしょう」

 もちろんヒットしないのは一義的に作品の責任だが、「日本人の観客が日中合作映画に対して、いまだ大きな期待感を持つに至っていない」と大高さんは指摘する。

「極論すれば、日本人の観客に『日中合作なら面白そうだ』と思わせることが求められているわけです。『KU-KAI』では、その中身、見せ方に、『面白そうだ』との方向性が見えてきましたが、まだまだです。日中の観客が、どのように好みが違うかを精査し、困難でもそれを映画製作に活かし、なおかつ日中間でしっかりと意思の疎通ができるプロデューサーの育成が両国で急務だと思います。尖閣諸島問題が挟まって渡せなかった『レッドクリフ』のバトンを、『KU-KAI』が必死に受け取ったと私は見ています。これを期に、道は相当険しいけれど、両国の映画交流を深めてもらいたい。これは甘い見方でも空想でもない。自国の市場に依存し過ぎる日本映画と業界は、変わらないとダメだと思う」

中国でも「日本映画リメイク」は苦戦

 実は日本だけでなく、苦しんでいるのは中国も同じだ。先の「マンハント」は中国国内の興行成績も公開後8日間で17億円と期待を満たせず、「原作を改変しすぎ」と評判が悪いという。

 中国は日本映画のリメイクにも乗り出しており、「マンハント」もその一環だ。他にも山田洋次監督(86)の「家族はつらいよ」(16年/松竹)が「麻煩家族」のタイトルで劇場公開されたものの、観客から「機械的に翻訳しただけで、オリジナリティも原作への愛情もない」と総スカンを食った。中国の観客は、しっかりと“元ネタ”のファンであることも浮かび上がって興味深い。

 いずれにしても、日本映画界と同じ悩みを中国映画界も抱えている。日中の距離は遠いが、成功するには“トライ&エラー”しか道は存在しないのも事実だ。傑作が誕生することを祈りながら、まずは両国“活動屋”のお手並み拝見というところだろう。

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週刊新潮WEB取材班

2018年3月3日掲載

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