「エモやん」語るスキルス胃がん闘病(上) “蕎麦事件”で発覚、胃の全摘手術を受ける

野球週刊新潮 2018年2月15日号掲載

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スキルス胃がんにも達観「江本孟紀」闘病手記(上)

 死とどう向き合うか。評論家の西部邁氏が「自裁死」を遂げ、超高齢社会に生きる我々は改めてこの「難問」との対峙を余儀なくされている。それは即(すなわ)ち、老いてからの病といかに付き合うか、その覚悟が問われているということでもある。「エモやん流」がん告白。

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 8年前、糖尿病になりましてね。以来、ほぼ毎月、血液検査を受けていて、おかげさまで血糖値はとても安定していました。糖尿病とは上手く付き合えている、血液検査も頻繁にやっているから自分は大丈夫――。振り返ってみると、糖尿病ばかりに気を取られていたんですね。まさか胃がんとは、想定外でした。

――球春到来。12球団がキャンプインし、プロ野球界は文字通り春の暖かさに包まれ、華やぎを見せようとしている。そんな球界にあって、ひとり「影」を抱えているのが、「エモやん」こと江本孟紀(たけのり)さん(70)である。先月29日、東京・千代田区のパレスホテル東京で、旭日中綬章を受章した彼の叙勲受章祝賀会が盛大に行われた。鳩山由紀夫元総理、川淵三郎元Jリーグチェアマン、アントニオ猪木参院議員。650人もが集ったその晴れの舞台で、江本さんは自身のがんを初告白した。彼が改めて、自らの「がん体験」を語る。

「始まり」は一昨年の暮れのことでした。胃に違和感を覚えて、なんかおかしいなあと思っていたんです。でも、胃薬を飲めば症状は治まる状態でした。血液検査でも、腫瘍マーカーに全く異常はなく、がんの兆候なんてなかった。健康そのもの。だから、本当に油断していたというか。今思えば、ちょっと痩せ始めていたんだけど、それは当時服用していた糖尿病の薬のせいだろうなと考えていたんです。簡単に言うと、糖を尿と一緒に体から出す薬を飲んでいたので、ちょっとくらい痩せるのも当然だろうなと。

 そうやって高を括(くく)っていたら、去年の3月、大食いで名を馳せるギャル曽根さんと一緒のテレビ番組で大盛の蕎麦を食べた時、詰まるっていうか、今までにない、胃を突き上げるような感覚を覚えたんです。それで、3年ぶりに胃カメラを飲んだらスキルス胃がんだと。その場で、胃の全摘手術をする方針が決まりました。「蕎麦事件」がなかったら、あのまま胃薬を飲んでごまかし、ダラダラと過ごしていたかもしれません。

――スキルス(硬い)胃がん。48歳で早逝したアナウンサーの逸見政孝さんの命を奪ったことで知られるこのがんは、早期発見が難しく、進行が速い。転移しやすく、見つかった時には既に手遅れということも多いため、「タチの悪いがん」とされる。5年生存率は10〜20%とも言われ、がんの治療法が進化している現代においても、代表的な「死に至る病」のひとつと言えよう。だがそこは、現役時代に「ベンチがアホやから野球がでけへん」と言い放ったことで知られるエモやん。たじろぎ、怯(おび)えて余生を過ごす――という「一般的」ながん患者とは一味違う。

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