なぜ「中国」の民度は低いのか 密告文化に差別制度、IT大国という“光”の面も

国際 中国

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都市戸籍と農村戸籍

 中国取材歴の長いベテランジャーナリストは、裏の顔についてこう分析する。

「1966年に文化大革命が起き、それ以前の中国の歴史や、仏教や儒教の教えも全て否定され、毛沢東だけを信じろと教育された。そして、親戚でも兄弟でも親子の間でも、密告が奨励されました。密告してでも自分さえ生き残れればいい、まさに自分さえ良ければいいという時代が66年以降10年も続いたんです。その文化が今の中国にも大きく影響していて、今回、明るみに出たホテルの便器ブラシ話も、いくら客が嫌がっても自分には関係ないと考えた上での行動でしょう」

 また、AIの時代に突入しようとしている現代において中国では、

「都市戸籍と農村戸籍という、社会福祉面で差がある文字通り差別的な制度が残っています。都市戸籍の富裕層にはモラル教育が為され、幾分改善しても、貧しい農村戸籍の人への教育は極めて不充分。結局、高級ホテルといっても、清掃などの仕事をしているのは農村戸籍の人たちなので、便器ブラシ騒動が起きるわけです」(同)

 中国出身の評論家、石平氏が話を引き取る。

「中国には『仇富(チョウフ)』なる言葉があります。文字通り、金持ちを目の仇にするという意味ですが、貧富の差が激しい中国では、一党独裁の共産党幹部たちの間で賄賂が蔓延し、金持ちイコール悪人のイメージが定着している。今回の話も、高級ホテルに泊まる富裕層に対して、そこで働く貧しい人たちが便器ブラシを使って憂さ晴らしをしている面があると言えるでしょう」

 国際政治学者で京都大学名誉教授の中西輝政氏が総括する。

「ギャップの大きさこそ、中国の本質なのです。金持ちと貧乏人、世界水準のものすごいインテリと字も読めない人、科学技術の進歩の一方で未だに迷信に惑わされて生まれた子どもを闇に葬ってしまう人たち。便器ブラシのニュースを見て、結局、中国は途上国なのだと改めて感じました。近代社会の基礎がないまま、超近代の技術のみを取り入れてしまって、要は順序を踏んでいないのです。中国大陸では、いつの時代も王朝が崩壊すると秩序が破壊されるという歴史を繰り返してきた。常にモラルや衛生感覚がリセットされる。流砂の如き文明なのです」

 数多ある麻生大臣の「舌禍歴」から、サラ金発言だけは、水に流して砂に埋めてあげてもいいのかもしれない。

週刊新潮 2018年2月8日号掲載

特集「5つ星ホテルでも便器ブラシでコップ洗い! IT超大国『中国』の恐るべき民度」より

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