芸人が大学受験に挑むワケ 今年は「田村淳」と「春日俊彰」

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使い古された企画という現実

「広末涼子さんに対して世論が厳しかったのは、『芸能活動との両立が可能なのか?』と疑問視していたからです。その懸念は現実のものとなりました。一方の小百合さんは第二文学部、つまり夜間です。両立を考えていることは明白でした。そもそも文系の学問は、自宅で本を読んでも勉強できます。芸能界で名を成した芸人がキャンパスに通う必要があるとすれば、学びたい専門分野を明確に持ち、ゼミなどで教授から直接に指導を受けることだけと言っていいでしょう。テレビ主導の一般入試組には“ネタ”の要素が見え隠れするのに対し、社会人入学や大学院に進むお笑い芸人の“本気度”が高いのは、そういう背景があるからです」(同・肥留間氏)

 それにしても、“ネタ”なのだから「受験生に失礼だ」と批判が起こってもおかしくないはずだ。だが、こうした大学受験企画は不思議に炎上しない。極論すれば、世論の反発を招いたのは80年代の島田紳助だけだ。

「視聴者も“ネタ”と理解して、全てを分かって楽しんでいますからね。制作者サイドに立てば、こんなに便利な企画はありません。合格すれば『凄い芸人だ』と話題になるし、不合格でも視聴者は『だよな』と納得する。女優や男優、フリーのアナウンサーなどなら落第の不名誉はリスクですが、芸人は文字通り笑ってもらえます。スポンサーも目くじらを立てない。まさしくいいことだらけです」(同・肥留間氏)

 とはいえ、さすがに使い古された企画になってきているのも事実だという。肥留間氏は「受験挑戦番組は、地上波の番組企画が貧困だという象徴です」と指摘する。AbemaTVはネットTVだが、田村の番組には地上波と同じ欠点を持っているようだ。

「それこそ同じテレビでも、知性派の視聴者はBSやCSなら喜んで見ます。優れた番組を制作する力は、まだ残っているんです。ところが地上波はご存じの通り、極端にリスクを恐れる。そのため、いつかどこかで見た番組ばかりになっています。受験挑戦番組は、その代表例の1つでしょう」

 本当に凄いのは大学を受験することでも合格することでもなく、人生で学びを継続し、それを次世代に伝えることだ、と肥留間氏は言う。

「お笑い芸人なら筆頭は東京芸大で特別教授を務めた北野武=ビートたけしさん(71)でしょう。田村淳さんも青山学院大学の合格を目指すより、東大教授を目指す番組のほうがよかったんじゃないでしょうか。視聴率のことは分かりませんが、少なくともそっちの方が、よほどカッコ良かったはずです」(同・肥留間氏)

 青山学院大学の合格発表は2月10日から27日まで、東京大学は3月10日の予定だ。

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週刊新潮WEB取材班

2018年2月4日掲載

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