コンビニ&スーパーで楽しむ 「千円ポッキリ飲み」のススメ

食・暮らし「小説新潮」2018年1月号掲載

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 千円でべろべろになるほど飲める「せんべろ」。これ、飲み屋じゃなくてもできるんです。限られた予算でいかにお酒とつまみを塩梅すべきか――6人の酒飲みの挑戦が始まった!(「小説新潮」2018年1月号より転載)

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 仲間を集めて、ルールを決めた飲み会をするのが好きだ。ファミレスで1人あたりの予算千円以内でどれだけ飲めるか、とか、つまみは餃子オンリーで飲んでみる、とか。
 中でも、一番盛り上がったのが、セブンイレブンで1人千円以内で酒とつまみを買って来て飲むというもの。酒にどれくらい予算を割くか、つまみは一点豪華主義で行くのか細かく刻むのか、など、その組み合わせに個人のキャラクターが出るのが面白い。ちなみにその組み合わせを、僕らはカードゲームの用語になぞらえて「デッキ」と呼んでいる。どんなデッキを組むかに頭を絞るのが楽しいのだ。
 ある日、新潮社文芸編集部から挑戦状が届いた。
「コンビニ千円デッキを組むなら、うちは負けませんよ」
 勝負を挑まれたからには、逃げるわけにはいかない。僕も最強のメンバーで立ち向かうことにしよう。

 12月の金曜の夜、僕らは新潮社へと赴いた。こちらは、フリーライターであり神保町の特殊古書店「マニタ書房」の店主でもあるとみさわ昭仁(あきひと)さん、ミュージシャンであり最近は『コンビニかけ合わせグルメ』(スモール出版)なる著作も上梓したコンビニ飯のオーソリティ、ディスク百合(ゆり)おん君、そして本業はアダルト系ライターなのに、なぜか酒飲み系の仕事ばかり増えている僕、安田理央という布陣だ。3人とも新潮社に足を踏み入れるのは初めて。いきなり、豪華な会議室に通されて緊張する。
「ここは、以前は社長室だったんですよ」
 僕に挑戦状を叩きつけてきた「小説新潮」の女性編集者・西さんが教えてくれる。こんな重厚な部屋で、コンビニ千円しばり飲みなんて、やってもいいものか? ばち当たらないか? そもそも社内でこんなことやっていいのか、新潮社?
 新潮社チームは、西さんの他、福島さん、村上さん。いずれもコンビニに頼り切った食生活を送っている強者だという。
 まず、今回のルールを決める。予算は千円以内で、満足して飲み食いできるデッキを組む。店はそれぞれ1軒のみで買い物する。電子レンジとお湯の使用はありだが、包丁を使ったり、炒めたり煮たりといった本格的な調理は禁止。
 あえて勝敗は決めない。デッキを発表した時の、他の参加者の反応が全てだ。「おー、さすが!」と言われたい。「さすが」と言われるにはどうしたらいいのか。そこに知恵を絞るのだ。己のプライドを賭けて。
 それではスタート。最初にそれぞれの担当店をくじ引きで決める。新潮社付近のコンビニ、スーパーから6店を決め、くじで当たった順番に選んでいく。
 1番を引いた村上さんは、普段よく使っているというローソンを選んだ。知り抜いていることは大きなメリットだ。2番の西さんは、イオン系の小型スーパーである、まいばすけっと。3番の福島さんは、ちょっと離れてるけど大きめのセブンイレブン、4番の百合おん君は新潮社に近いセブンイレブン。セブンイレブンのみ2軒にしたのは、やはり日本のナンバーワンコンビニであることに敬意を表してのことだ。そして、5番の僕は、スーパーマーケットであるキッチンコート(京王ストア)。6番のとみさわさんはファミリーマートとなった。
 制限時間30分、6人のメンバーは千円を握りしめ、それぞれの狩場へと散っていった。

勝利の方程式が見えてきた

 さて僕の担当はキッチンコート。訪れたことのないスーパーマーケットだ。どんな商品が強いのかも見当がつかない。まずは店内を一周して品揃えの傾向をつかむ。
 うん、スーパーだ。とにかく広い、コンビニ10軒分くらいの広さがある。そしてコンビニとは明らかに品揃えが違う。そこをしっかり抑えてメリットとして打ち出す戦略が必要だな。コンビニになくてスーパーにあるもの、それは生鮮食品と、遅い時間になると貼られる割引シールだ。ここがポイントになるだろう。
 千円しばりで重要になるのが、酒にいくら予算を割くかだ。僕は今回はつまみに重点を置きたいので、酒はなるだけ安く済ませたい。だからと言って、発泡酒ひと缶とか、焼酎ポケット瓶なんてのは面白く無いし、酔えない。
 そこで目に入ったのがサントリーの「-196℃ ストロングゼロ ダブルレモン」だ。最近、増えてきた強アルコール酎ハイ。なんと9度。一部で合法ドラッグとまで呼ばれている強さだ。あんまりキツすぎる酎ハイは飲みにくくて敬遠しているのだが、これを炭酸で割るというアイディアを思いつく。半分に割っても4・5度。それでも普通の酎ハイの度数と同じくらいだ。コンビニではストロングゼロ500缶は207円、ウィルキンソン炭酸500mlは103円。それがここでは181円と84円の計265円。45円も安い。千円しばりでの、この45円は大きい。スーパー選んでよかったな、おれ! 265円で1lもの酎ハイをゲットしたわけである。
 さて残額は735円。これをどう使うか。僕は目星をつけていた刺身コーナーへと向かった。刺身はコンビニ班では真似できないだろう。しかも、今は割引シールが貼られているはずだ。735円あれば、そこそこのブツが数点買えるはずだ。勝利の方程式が見えてきた。こみ上げる笑みを抑えきれない。

 30分後、6人が再び会議室に集合。千円しばりバトルの開戦だ。いや、まぁ、買ってきたものを見せて説明するだけなのだが。

なんと完璧なフルコース

 まずは村上さん。今回の参加者の中では最年少の27歳。勝手知ったるローソンで彼が選びぬき、組み上げたデッキはこれだ(写真1)。
「千円でどうクリスマス気分を味わえるかというのがコンセプトです」
 そう来たか。ワインは「サントリー・デリカヴィータ 赤」で380円。安い。
「ワインに合うコースということで考えてみました。前菜は『ローソンセレクト なめらか豆乳入り五目白和え』です。120円。白和えってクリーミーな食感でワインに合うんですよ。このマリアージュを楽しんでもらいたい。炭水化物もいきたいなということで、『ローソンセレクト えびと4種の野菜 海老ピラフ』108円。そしてメインはやっぱりチキンですね。ローソン名物の『からあげクン』は外せません。ワインに合うようにチーズ入りを選びました。5個で216円。甘いものも欲しいので『ローソンセレクト ゼロノンシュガーチョコレート』。これはナチュラルローソンのブランドで、砂糖不使用でローカロリーなんですよ。148円。合計972円です」
 なんと完璧なフルコースだろうか。女の子を誘っての聖夜のディナーでもバッチリである。白和えとノンシュガーチョコと、ヘルシー感覚を押し出しているあたりも見逃せない。さすが20代。

 続いては西さんのまいばすけっとでセレクトしたデッキ(2)。
「私もワインを中心に組んでみました。ちょっとオシャレ感を出してますね」
 ワインはスペイン産の「ヴェラタ・ボバル・カベルネ・ソーヴィニヨン」。483円とは思えない高級感のあるラベルだ。
「この『トップバリュ 塩だけで味付けしたトルティアチップス』はシンプルな味で美味しいんです。84円。そして『トップバリュ ベビーチーズ ブラックペッパー入り』95円と『トップバリュ ナッツとレーズンミックス』170円。この『トップバリュ アヒージョヌードル』がちょっと面白いかなと思って買ってみました。オリーブオイルが効いてるカップラーメンです。105円です。ワイン1本開けちゃったら、飲み過ぎなわけで、体のことを考えて『トップバリュ タウリン入りドリンク 2000』。これで翌日もばっちりです。なんと1本48円でした。合計985円です」
 健康面まで考えてタウリンドリンクまで抑えるパーフェクトなデッキ。女性ならではのオシャレ感もいいが、やはりアヒージョヌードルのインパクトが目を引く。イオングループのプライベートブランドであるトップバリュはデザインに高級感があるので、並べてみると、これが全部で985円だとは、とても思えない。お皿に盛り付けると立派なオードブルである。

かけ合わせマジック

 3番手も女性の福島さん。コンビニで揃えたとは思えない意表をついたデッキで参加者の度肝を抜いた(3)。
「私もワインなんですよね。白です。これは408円なんですけど、本当はセブンイレブンで600円くらいのが大好きなんですよ。今日は予算オーバーしちゃうので泣く泣くあきらめましたが」
 いつもは600円もするワインを飲んでるなんてハイソ! と思ってしまったが、考えてみたらそれでも激安だった。千円しばりをやってると感覚が狂ってくる。このワインはチリ産の「セブンプレミアム アンデスキーパー ソーヴィニヨン・ブラン」という銘柄。
 福島さんのメインディッシュは、缶詰の「宝幸 オリーブオイルサーディン いわし油漬」204円と「セブンプレミアム オリーブオイル さば」189円。それを温めて、敷き詰めた「セブンプレミアム コールスロー」105円の上に載せようという作戦だ。さらにクラッカーがわりの「ギンビス たべっ子どうぶつ」小袋32円を2袋。実際に盛り付けるとボリュームもあり、完全に料理。これがコンビニで合計970円で揃えた食材だけで作ったとは思えない仕上がりだった。

 4番手はディスク百合おん君。『コンビニかけ合わせグルメ』の著者としては、ここで下手な手は打てない。おそらく本日の参加者の中で一番プレッシャーを感じていたはずだ。
 しかし、さすが、と思わせるアクロバティックなデッキを展開してくれた(4)。担当はセブンイレブン。
「さぁ、かけ合わせますよー。まずこの発泡酒の『セブンプレミアム ザ・ブリュー350ml』123円に、『セブンプレミアム まるでキウイを冷凍したような食感のアイスバー』140円を溶かして混ぜると、ビアカクテルになるわけです! そして『砂肝の黒胡椒焼き』300円に、『セブンプレミアム トッピング用 温泉たまご』51円と『セブンプレミアム ドレッシング シーザー』26円をトッピング。このドレッシングの小袋は本来はサラダ用なんですが、安いのでこういう使い方するのに便利なんですよ」
 百合おん君のかけ合わせマジックは、止まらない。
「冷凍の『セブンプレミアム クリーミーな食感 たこ焼』192円は、添付のソースは使わずに砂肝に付いてきたレモン汁でいただきます。さらにたこ焼のうち2個は、こっちの『セブンプレミアム フリーズドライ かきたまスープ』105円に投入するとフワフワになって美味しいんですよ」
 発泡酒、キウイアイス、砂肝、温泉たまご、たこ焼、かきたまスープ、シーザードレッシングが、キウイビアカクテル、砂肝の温泉たまご和えシーザードレッシングがけ、レモンたこ焼、フワフワかきたまスープへと変身したわけである。まさにかけ合わせの魔術師・ディスク百合おんの面目躍如である。合計937円。みごとにすべてセブンイレブンのロゴ入り。百合おんのセブンイレブン愛が伝わってくる。酒が350mlひと缶だけというのが、ちょっと残念だが。

異彩を放つのが、柿

 さて、5番手は僕だ。「-196℃ ストロングゼロ ダブルレモン」181円、「ウィルキンソン タンサン 500ml」84円。そして、カツオのタタキ344円、サーモンフライのタルタルソースがけ257円、穴子天ぷら107円。合計973円(5)。
 つまみは、全て魚介類。しかも、すべて20%引きだ。メインを刺身にすることは最初に決めていたが、その中でもカツオのタタキを選んだのは、タレが付いていたからである。もしかしたら新潮社に醤油がないかもしれないという可能性も鑑みての判断だ。
 遅い時間なら刺身や惣菜が安く買えるというのはスーパーならではのメリット。穴子天ぷらなんか100円チョイとは思えないほどのボリュームだ。
 さらに合計1lの酎ハイ。千円とは思えない満足度が味わえるデッキだと自負している。

 ラストはとみさわ昭仁さん(6)。担当はファミリーマートだ。
「いやー、たこ焼きもかきたまスープも、百合おん君とダブっちゃったよ」
 そう言いながらも異彩を放つのが、柿。まるごとの柿が1個ゴロン。
「ファミマの店頭で売ってたんだよねー。酒を飲む前に柿を食べておくと悪酔いしないからね」
 というわけで、いきなりガブリと柿に噛み付くとみさわさん。そうか、そういうのを売ってるコンビニもあるのか。ちなみに新潟県産おけさ柿。108円。
「酒は、『ファミリーマートコレクション 焼酎甲類25度 220mlカップ』181円を『ウィルキンソン タンサン 500ml』103円で割ります。メインは『ファミリーマートコレクション とろーりたこ焼き』370円と、『ファミリーマートコレクション ふわふわたまごのスープ』141円。これはね、たこ焼きをスープにつけて明石焼きにします。さらに飲みすぎちゃった時のために『森永製菓 ラムネ』76円。これで合計979円」
 最初に柿、最後にラムネという気配りがミソだ。さすが酒飲みのベテラン。悪酔いへの対策はばっちり。

 というわけで、まさに六人六様の千円デッキとなった。ちゃんと皿に盛り付けてみると、どれもとても千円だとは思えない。
 その後、大宴会となったわけだが、つまみに関しては、最後には残ってしまうほどのボリューム。ひとりあたりわずか千円で、こんなに盛り上がれて、たっぷり飲み食いできるのだ。
 ぜひ、みなさまも年末年始で、ごちそうに飽きたら、こんな楽しみ方で盛り上がっていただきたい。みんなでワイワイやるのもいいが、一人でにんまりしながらやってみるのも、また面白いのだ。

撮影=広瀬達郎(新潮社写真部)

安田理央(やすだ・りお) フリーライター、アダルトメディア研究家。1986年より雑誌編集業務に従事。コピーライター業を経て、1994年よりフリーライターとして活動を開始する。主にアダルトテーマ全般を中心に執筆。特にエロとデジタルメディアとの関わりに注目している。近著に『巨乳の誕生』など。