“何もかもが嫌になって”豪邸に放火した84歳元歯科医

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「いやあ、驚きましたよ。丑三つ時に、いきなり警察と消防に叩き起こされて“急いで屋外に避難してくれ”ですからね。厳冬の午前3時すぎ、とりあえず飛び出しました。外はもの凄い火焔。未だ、この辺りには臭いが残っています」

 とは東京都目黒区中根1丁目、放火により全焼した「黛歯科医院」のご近所さん。

「放火したのが、家の主(あるじ)の黛嘉泰(まゆずみよしやす)さん本人と聞いて、2度驚きました」

 目黒区のお屋敷町、中根界隈でも一際豪壮な大邸宅を構えていたのが、黛家だった。火災のあった12月28日に放火の現行犯で逮捕された当主は、東京医科歯科大卒の84歳の元歯科医である。

「門扉(もんぴ)から、黛歯科医院のある玄関まで、優に50メートルはあります。恐れ多くて、受診したことはありません。ちょっと特殊な感じで……タクシーで診察を受けに来られる方が多かったようですね」

 と、お向かいさん。

“何もかもが嫌になった”と悲観しての放火だという。いったい何があったのか? 道ですれ違えば、にこやかに挨拶する中肉中背の紳士だったという。

 この地に長く暮らす女性(79)が言う。

「もう数十年前になりますが、綺麗な女性をお嫁さんにしたと評判になりましてね。歯医者さんとしても腕がたって、私も治療して頂きましたが、痛かった覚えがありません」

 85歳のご近所さんが長嘆息する。

「何がイヤになったのか。最後に話したのが数年前。本好きのインテリでした。お子さんがいなくて、自分の代で家が途絶えることを苦にしたのかも知れません。ボケてはなかったから、衝動的な行動でしょう。何ひとつ欠けたもののない、満月のような人生とお見受けしたが、他人様の悩み事だけは解らんね」

 死者の出なかったことが、救いである。

週刊新潮 2018年1月18日号掲載

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