被害者の漁師は「全部、オレのだ!」と叫んだ――北朝鮮木造船“盗難事件”の全真相

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50万円で条件をつけた朝鮮総連

「そして“見舞金”として約50万円は出す、と。その代わりと出してきた条件というのが、逮捕された船員たちの刑事処分を軽減する署名に同意して下さいというわけです。お詫びすら言わずに、条件まで出してくるのですから、話になりませんよ。1時間も経たずに打ちきりました。総連が何を言っているのか知りませんけど、弁護士は日本人なんだから、私たちの気持ちぐらいわかると思いますけど、法律の世界ではそういうものなのですかね。それっきり、年が開けたいままで、何も言ってきませんよ」

 だが前出の吉田さんの考えは少し違っていた。

「こう言ってはなんだけど、実はオレはさ、50万円でも貰えないよりはマシかなとも思ったんだ。道所有の発電機や組合のものは、補償されるだろうけど、個人所有のものは補償するって話にもならないかもしれないしね。今日(1月5日)だって、もうじき漁が始まるから磯舟の巻き上げ機をやっと島に設置してきたんだけどさ……」

 心配はもっともだ。だが、そこは日本である。松前町には、全国各地から寄付金の申出が殺到。町と漁協は「復旧協議会」を立ち上げ、寄付金の口座を開設した。

岩のりのシーズンがスタート

「いただいた寄付金からは、吉田さんの被害を優先的に充てたいと思っています。小屋がないと漁に出たみんなが困りますからね」とは佐藤組合長だ。

 今年の漁も間もなく始まる。冬の松前は、松前小島の岩場で捕れる岩のり漁が盛んだ。小屋の復旧がまだできていないため、泊まりがけでなく日帰りでの漁が続く。そのため例年の量は期待できないともいうが、なんとかのりきってもらいたいものだ。

週刊新潮WEB取材班

2018年1月8日掲載

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