被害者の漁師は「全部、オレのだ!」と叫んだ――北朝鮮木造船“盗難事件”の全真相

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バイクまで海に棄てた

 吉田さん個人の被害だけでも100万円を超える。漁協などの被害を合わせると総額800万円近いという。しかも、その盗まれた品々のほとんどは――。

「あいつら、警察に見つかって逃げる時に海に棄てたんだよ。バイクも棄てていた。証拠隠しなんだろうけど、ひでえことをする」

 12月9日になって、いずれも自称の船長カン・ミョンハク(45)、船員リ・ヨンナム(32)、同リ・トンナム(59)の3人が北海道警に窃盗容疑で逮捕される。だが、他人様のジャンパーまで盗むような連中に補償を求めたところで無理である。かといって、彼らのバックにいるのはあの北朝鮮である。一体どこに話をつけたらいいのか悩むうち、同国の在日本大使館を自認する在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)が交渉の席に着いた。

 12月25日のことだ。松島町内で行われた協議には、施設を所有する松前さくら漁協の佐藤正美組合長(73)や前出の吉田さんらが出席した。佐藤組合長が言う。

「総連側は、日本人の弁護士が代理人として出席しました。開口一番、総連はお金がなくてとても弁償できる状況にありません、と言うんですよ。そして、松前町にはお世話になっているとも……」

 松前町には、専念寺という浄土真宗では道内最古の寺がある。境内には、戦時中、旧国鉄松前線(すでに廃線)の敷設工事に従事して亡くなった人の慰霊碑が建っている。碑には朝鮮人の名も刻まれ、毎年、慰霊祭が開催されているという。韓国同様、強制労働で世話になったとでもいいたいのだろうか、もちろんこの場に持ち出す話ではない。

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