大学は出るけれど「桐生祥秀」陸上部なき意外な“就職先”

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「アメリカでやらないか」

 大学は出るけれど、再び母校のお世話になって好きなことに打ち込める。企業の歯車として酷使される鈍足な学生からみれば、なんとも羨ましい限りである。

 だが、男子100メートルの元日本記録保持者で、ロス五輪にも出場した不破弘樹氏は、こんな懸念も口にする。

「ずっと母校で練習をすれば、自分よりタイムが劣る後輩たちと汗を流すだけに終わります。カール・ルイスやウサイン・ボルトは、若い頃からトップレベルの集団に身を置き切磋琢磨してきました。私が企業からスポンサリングを受ける立場にあれば、間違いなく海外へ渡っていたと思います」

 高校3年生で五輪初出場を果たした不破氏は、“ある後悔”を経験している。

「カール・ルイスのコーチとして有名なトム・テレツ氏から『アメリカでやらないか』と誘って頂きましたが、度胸が足りず断ってしまったんです。桐生は9・98をマークした環境を変えたくなかったのかもしれませんが、次世代を共に担うサニブラウンやケンブリッジ飛鳥も海外で研鑽を積んでいる。もっと貪欲に高みを目指して欲しい」

“幻の9秒台”とならぬような選択を――。

週刊新潮 2017年12月21日号掲載

ワイド特集「人生は選択の連続」

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