綾野剛演じるサクラは「理想の上司」! 不育症に向き合った「コウノドリ」第9話

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 産科を舞台にした医療ヒューマンドラマ「コウノドリ」は、さまざまな出産、そして時には死と隣合せの過酷な医療現場のあり方を描いている。鴻鳥サクラ(綾野剛)、四宮春樹(星野源)ら産科の医師や、小松留美子(吉田羊)ら助産師たちの奮闘が、毎週出産の喜びや悲しみに寄り添い、多くの視聴者を勇気づけている。

 第9話は、流産を繰り返してしまう不育症の妊婦の葛藤、故郷に戻った四宮と父の対話や、医師たちそれぞれが人間として成長する様子が描かれた。

 とある外来の日、サクラは篠原沙月(野波麻帆)に流産を告げた。沙月はこれまでにも流産を繰り返しており、自分は「不育症」なのではないかと悩んでいた。夫の修一(高橋光臣)はそんな妻が心配でならないが、何もしてやれない自分にもどかしさを感じている。

 一方、父、晃志郎(塩見三省)が倒れたという連絡を受けて、四宮は能登へふたたび帰郷した。そこへ、晃志郎の診ていた妊婦が早剥のため、緊急カイザーが必要な状態となった知らせが入った。自分が手術をすると言い張る父に、四宮は代わりに執刀することを申し出る。

 手術の場面ではお産に不慣れな整形外科医による前立ち、輸血用血液の不足など、地方での医療の実態が短い中でも細かく描き込まれていたのが印象深い。そして無事に赤ちゃんを取り上げた四宮のマスク越しには、かすかな笑顔が浮かんでいた。

 手術を終え、四宮親子がぽつりぽつりと語り合うシーンは今回の中でも印象深いものだった。無念をにじませる晃志郎に、四宮は初めて、故郷を愛し、故郷のお産のために尽力し続けてきた父親の思いを知るのだった。別れ際、そっと交わされた親子の握手。晃志郎の表情は、自分の老いへの悔しさと息子が立派な産科医になった嬉しさに満ちていた。そして今度こそ、四宮も父へ微笑みを返したのだった。

 父(あるいは母)と同じ職業に就くということはどういうことなのか。あらかじめ敷かれたレールに反発する子もいれば、その上であえて選び取る子もいるだろう。親を尊敬しながら、その親を超えたいと思う心が人にはある。親の仕事を尊敬しているからこそ、別の道を選んだ者、事業を継いだ者を私は多く知っている。それと同じくらい、親を嫌悪して「ああいうふうにはなりたくない」というモチベーションで生きている者も知っている。

「子どもは親を選べない」とよく言われるが「コウノドリ」はまさにそのようにして子どもが産まれる瞬間を描くドラマだ。しかしこの四宮親子のエピソードは、親を選べず産まれてきた子どもたちが、成長してどのような道を選択するか、人生の遥か先を照らすものだった。そうした意味で、医療ヒューマンドラマという枠を超えた人々の生き様を描いているセカンドシーズンは意義深い。

 そして私は改めて、親のいない孤独な身でみずから道を切り開いてきたサクラの人生にも、思いを馳せた。

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