子供は宝? それともリスク──妊活に励む女性たちの迷いと戸惑い

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 東京都の小池百合子知事が、教育機会の平等化のため私立高校の授業料の実質無償化を検討していることを発表した。2月の都議会で可決されれば決定となる。世帯収入760万円未満の家庭に限り、2017年度から都内在住の私立高生の授業料を実質無償化するというものだ。現在も、条件付きで寮は実質無償化されているのだが、一般的に私立高校の学費は公立より高額なので、助かる家庭も多そうだ。

 子供が独立するまでにかかると言われる費用総額は1000万円、学費に1000万円の計2000万円とも言われる。

 夫婦双方が働いていたとしても、子供1人当たり2000万円もかかると言われると、子作りに慎重になるのも無理はないかもしれない。

 しかも結婚しても大人ふたりなら自由に生活できるが、子連れとなると、ベビーカー論争に始まって、騒音によるご近所トラブルやら、ママ友付き合い、PTA論争と、これまで考えなくてもよかった難題が降りかかってくる可能性もある。

 イラストレーター、漫画家としてキャリアを積んできた小林裕美子さんも、「子供はいなくてもいいかも」と思っていた一人だった。

 学生時代に知り合った夫と結婚したのは27歳の時。それからは夫婦ともども、仕事も遊びも十分に堪能してきた。もともとそんなに子供好きというわけでもなかったし、夫も積極的に子供がほしいといいださなかったこともあり、気がつけば結婚生活も10年を過ぎた。

「このまま夫婦ふたりで過ごすのでいいのかな」と悩み始めたのは、30代も半ばを過ぎた頃。子供を持つ人生が頭をよぎることもあったが、意識的に考えないようにしていたある日、仕事で出逢ったワーキングマザーからかけられた「少しでも子どもがほしいと思うなら、何をおいても産んだほうがいい、子どもは宝だよ」の一言で、不妊治療することを決意したという。

 この日のことを、小林さんは自著『それでも、産みたい 40歳目前、体外受精を選びました』で画像のように描いている。

 仕事も趣味もなんでも自分の思うままに出来る生活よりも、自由な時間が少なくなっても子供と笑いあう毎日──小林さんがリスクより、未来の「宝」を選んだ瞬間だった。

 小林さんは、自分の経験が、「体外受精って怖いのかな?」「夫が協力的じゃないときはどうすればいいの?」「命を作り出すなんてエゴなんじゃないか?」と不妊治療に躊躇や戸惑いを感じている人の何か少しでも参考になったら嬉しい、と同書の「はじめに」で綴っている。

 子供を産み育てることが「何よりの幸せ」と言い切れない時代だからこそ、女性は悩む。

 そして、子供を持ちたいという気持ちになったときには、通常妊娠が難しい年齢になっていることもままあるだろう。

 日本の年間を通じた赤ちゃんの出生数が、現在の形で統計を取り始めてから初めて100万人の大台を割り込んだ今だからこそ、子供を持つことを「リスク」ではなく「宝」だと、女性が心から感じられるシステム作りが必要なのではないだろうか。

デイリー新潮編集部

2017年2月6日掲載

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