“偽装亡命”説も浮上… 「北朝鮮兵士」越境銃撃事件

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 核開発を巡り緊張感のたかまる板門店の共同警備区域(JSA)……ではなかったことが、11月13日に起きた北朝鮮兵士の亡命劇で露呈した。

「2001年に大ヒットした韓流映画『JSA』でも描かれたように、あそこは軍事境界線を挟む800メートル四方のせまい土地。つまり、物理的にはもっとも亡命が容易な場所です。だからこそ、北ではいわゆる“出身成分”の良い、士気の高い軍人を選抜して配属します」

 と話すのは、ある北朝鮮ウオッチャーだ。

「一方、今回亡命した兵士は、軍服などからJSAの配属ではなく、周辺支援部隊の下級運転兵とみられる。それなのに境界線のわずか10メートル手前まで、ジープで突っ込まれてしまっているのです」

 たまたまジープが側溝に嵌り、徒歩になったところへ、追いかけてきた兵士らが小銃や拳銃を約40発発射。逃亡兵は境界線を越えたが、腹などに7発が命中し、意識不明の重体だ。

「この兵士が境界線を越えたのが15時15分頃。韓国側が保護したのが同56分。その間に警備兵は何をしていたのかと韓国でも批判されています」(在ソウル記者)

 韓国軍のゆるみは毎度のことだが、北のゆるみも相当なものではあった。

「そこで“偽装亡命”説です。兵士を本気で撃ってしまうくらい北朝鮮は平気でやりますからね」(同)

 韓流映画の「二重スパイ」も、重傷を負いながら亡命してきた人物が……というストーリーだった。

「あの映画でも描かれていたはずですが、脱北者は国家情報院による徹底した尋問などでスクリーニングされ、さらに統一省の保護下で1カ月ほど集団生活をさせられる。偽装亡命を前提とした態勢があって、保護施設を出た後でも、怪しい人物には治安機関が行動確認をしています」(同)

 もっとも、銃弾摘出手術を受けた兵士の腹部からは、長さ27センチもの寄生虫などが……。肥料不足により人糞で育てた農産物をほぼ生で食べるなど、苦しい生活状況が窺われる。

 これも偽装ならば、北朝鮮の演出も見事だが……。

週刊新潮 2017年11月30日号掲載

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