「満島ひかり」が異次元の大暴れ! 女たちが復讐を決意した「監獄のお姫さま」第6話

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 あるイケメン社長へのリベンジを企むワケアリの女たちを描く「監獄のお姫さま」。物語は女たちが大企業の社長である板橋吾郎(伊勢谷友介)を誘拐、監禁した2017年のクリスマス・イヴと、彼女たちが出会った女子刑務所内での回想シーンを行き来して進む。

 脚本は宮藤官九郎。元女囚たちを演じるのは小泉今日子、菅野美穂、坂井真紀、森下愛子、夏帆。元看守役には満島ひかりという、豪華な美女たちが勢揃いだ。物語も中盤に差し掛かり、キャラクターたちの過去も徐々に明かされて、一気に面白みが増している。

 第6話は、恋人だった板橋に陥れられて刑務所に収監された江戸川しのぶ(夏帆)が息子、勇介を板橋に連れ去られ、放心状態となっているところから始まる。刑務所内で週刊誌を手に入れた勝田千夏(菅野美穂)は、板橋とタレントの西川晴海(乙葉)が勇介を自分たちの息子として育て、すでに入籍しているという記事を女囚たちに見せる。我が子同然のように育てた勇介を奪われた女囚たちはやり場のない怒りとやるせなさを抱く。そして何より、母親であるしのぶの存在を抹殺されたことが女囚たちには許せない。

 しかし今回も、回想シーンの板橋はひたすらにワルい。しのぶの母、江戸川民世(筒井真理子)を言葉巧みに先回りして丸め込み、勇介を奪った手口が明らかにもなった。思ってもいないことをさも真剣に思っているかのように語らせれば、伊勢谷友介の右に出る者は伊勢谷友介しかいない。伊勢谷友介の演技の何がワルいか。それは、目元と唇である。大きく光る瞳は、カリスマ性を持って人を率いる真実みがあるし、ねめ回すような下からの目線は威圧感がある。そこに、唇の片方の端だけをつり上げ、勝ち誇ったような笑みを浮かべれば最強の悪役の完成である。実際のところ晴海を本当に愛しているのか、しのぶのことをどう思っていたのか、何ひとつ板橋の言動を信じることはできない。

 そんな中、検事の長谷川信彦(塚本高史)に連れられて、カヨの息子、公太郎(神尾楓珠)が面会にやってきた。カヨは元夫に新しい恋人ができ、既に同棲を始めていることを知るが、のちの公太郎からの手紙で「父さんと母さんは別れても、僕は母さんの息子」という言葉に背中を押され、離婚届についに判を押す。息子との心のつながりを確かに感じるカヨの表情は、いつしかしのぶにもこんな日が訪れれば良いと願わずにはいられないほど美しく穏やかだった。

 並みいる俳優陣の中で、小島悠里(猫背椿)が大活躍だった。過去を隠してイケメン(※これも伊勢谷友介が演じている)と付き合うも、前科があることを言えない罪悪感から再び覚醒剤に手を染め、5度目の収監。プロポーズシーンでのイケメンが放った「僕はゆりりんの過去を気にしない。たとえ元ヤンでもギャルでも……あとは劇団員でも」という台詞には思わず吹き出した。小島を演じる猫背はクドカンと同じ大人計画の“劇団員”であり、メタ構造の自虐ギャグとして彼女にしか当て書きできない最高の小ネタであったからだ。

 そして怒濤の「先生」こと若井ふたば(満島ひかり)が今回も大暴れだ。クドカン自身がもはや、満島にブチ切れさせることを楽しんでいるとしか思えないレベルで「いい加減吐いたらどうなのよ!」と板橋に回し蹴りする先生、晴海からの電話に出て犯人グループとの死闘のフリを熱演する先生、刑務所に出戻りした小島に激怒する先生……。一躍満島ひかりがその名を馳せた「Women」(日本テレビ・2013年)や「カルテット」(TBS・2017年)での、ぽつりぽつりと言葉を発する中での吸引力とは別物の、異次元の爆発力が本作ではこれでもかと引き出されていて、毎週たまらない。もはや一種のカタルシスである。

 クドカンの遊び心といえば、歌手の前川清が本人役で刑務所の慰問コンサートをひらき、カヨこと小泉キョンキョンとデュエットを披露したのも豪華で粋なサービスシーンだった。

 しかし、シャバでの板橋の絶好調ぶりの情報が次々と小島によってもたらされ、女囚たちは絶望と無力感に襲われる。そしてついにカヨは、意を決して「板橋吾郎に復讐します」と雑居房での夕食時に宣言する。次々に計画に乗る女囚たち。しのぶが感謝の意を表し、しのぶの会社の製品、えどっこヨーグルトでの乾杯を申し出て、彼女たちは固めの盃を交わし合った。

 ヨーグルトを口のまわりにつけてにっこり笑顔を見せたしのぶは心から嬉しそうで、本当に可憐だった。赤と白のえどっこヨーグルト、それに刑務所の指定服であるグリーン。クリスマスカラーで固められた女たちの絆は、クライマックスへ向けてどんな結末を迎えるのか。

 だが、何とラストシーンでは検事である長谷川がカヨに「好きです、付き合ってください」と(タキシードの盛装で)まさかの獄中告白。いやいや、これからどうなる? どうなっちゃう!? 正に見れば見るほどハマるクドカン沼にどっぷりである。

 社長秘書として本社に呼び戻されたふたばも、刑事に問いつめられて絶体絶命だ。頼む、切り抜けてくれ満島ひかり。誰も裏切らず、憎み合わず、正義も悪も罪も罰もわちゃわちゃになった、最高のクライマックスまで走り抜けてくれ!

西野由季子(にしの・ゆきこ)(Twitter:@nishino_yukiko) フリーランサー。東京生まれ、ミッションスクール育ち、法学部卒。ITエンジニア10年、ライター3年、再びITエンジニアを経て、永遠の流れ者。実は現代演劇に詳しい。新たな時代に誘われて、批評・編集・インタビュー、華麗に活躍。

2017年11月24日掲載

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