【座間9遺体事件】私はこうして『首吊り士』から逃れた―― 同棲を約束しながら九死に一生を得た21歳女性の告白

社会新潮45 2017年12月号掲載

  • 共有
  • ブックマーク

 年若い女たちは次々とこの男の部屋に足を踏み入れ、二度と帰ることはなかった。同棲を約束しながら九死に一生を得た女性が明かす、稀代の殺人鬼の素顔――。(以下、『新潮45』12月号掲載の「私はこうして『首吊り士』から逃れた」より一部転載)

 ***

「毎晩のように連絡を取り合う関係になってからも、彼は私のことを『殺したい』と繰り返していました。『私を殺したら“りょう君”は犯罪者になっちゃうよ』私がそう告げると、「刑務所に行くんだったら、俺も死んだほうがいい」どうしてそこまで人を殺すことにこだわるのか――。困惑する私を尻目に、彼はこう続けました。

『死にたいと言ってる人を見ているのがツラいんだよ。病んだまま生きているより、俺が殺して楽にしてあげたい。その手助けをしてあげたいんだ」」

 千葉県在住の女性(21)は、“やまもとりょう”と名乗った男とのやり取りをこう振り返る。やまもとりょう、それは白石隆浩(27)の偽名である。

 白石が警視庁高尾署に死体遺棄容疑で逮捕されたのは10月31日のことだ。捜査員が神奈川県座間市内にある彼の自宅アパートに踏み込んだ際、室内には異臭が立ち込め、無造作に置かれたクーラーボックスや密閉型の収納箱からは、実に9人分の頭部と、あばら骨など240本もの骨が発見された。

  2ヵ月余りのうちに9人もの命を奪った稀代の殺人鬼。そんな男と逮捕直前まで親密な「交際」を続けていたのが先の女性だ。

 2人の出会いは今年8月末にまで遡る。それは、白石が最初の殺人に手を染めた時期と重なる。

「私がツイッター上にアカウントを作ったのは8月下旬のことでした。自殺をほのめかすツイートを投稿したのは、それからまもなくの8月末。『一緒に死ねる方を募集します』とつぶやいて、『#自殺募集』と書き込みました。彼から連絡があったのは9月6日です。そして、翌7日に彼から『DMだとアレなのでカカオトークでもしませんか?』と誘われて、それからカカオトークを使ってメッセージ交換や通話などのやり取りが始まったんです。

 いまでも覚えていますが、最初に電話をした時、彼はこう切り出しました。

『ロフトがついているアパートをずっと探していて、ようやく今のところを見つけたんです。ロフトがついていると首吊りが簡単にできる。ロフトがついたアパートじゃないと嫌だったから、ここが見つかってよかった。駅も近いですしね』

 その時は、彼自身が首吊り自殺をするために、ロフトのあるアパートを探していたんだと思っていました」

 だが、ご承知の通り、そのロフトで首を吊ったのは白石ではなかった。無論、当時の彼女には知る由もない。むしろ彼女は、心の隙間を埋めてくれる存在と信じ込み、白石との親交を深めていった。

「ポチャ、ポチャ」という水の音

「彼と電話をしているうちに気になったことがありました。というのも、はじめて電話をしてから2週間ほど、いつも受話器の向こうで水の音がしていたんですね。シャワーを流しっぱなしにしているような『ジャー、ジャー』という音や、流し台の蛇口から水が滴り落ちている『ポチャ、ポチャ』という音。あとは、『コポコポ』という水槽みたいな音です。私が気になって『なんで水を出してるの?』と聞いても、彼は『いや、出してないよ』と取り合いません。でも、空耳じゃないんです。どうしても気になって、『やっぱりポチャ、ポチャって音がしてるよ』と言ったら、『その話はもういいよ、やめて』と遮られた。追及されたくないことだったのかもしれない。

 それ以外にも、電話越しに女性の声が聞こえたことがありました。よく聞き取れませんでしたが、彼の背後から『うー、うー』という女性の呻き声がした。彼に『誰かいるの?』と聞いても、何も答えない。逆に脅かそうと思って『家になんかいるよ?』とメッセージを送ったら、『またそのネタか。と言いたいところだけど、本当にいると思う』って返事がありました。

 そして、10月中旬くらいでしょうか。彼が自分から、『人を殺したことがあるんだ』と語り始めたんです。

『直接は殺していないんだけど、自殺したいと悩んでいる子に死に方を伝授した。そのせいで死んじゃった子が何人もいる。でも、俺が教えたことで本当に死ぬとは思わなかった』

 死んだ人たちとはもともと顔見知りで、『こうやれば楽に死ねるよ』と伝えたそうなんですが、『まさか死ぬとは思ってなかったよ』、と。

 一方で、10月の下旬に、私にこう言ってきたのを覚えています。

『以前、お金をもらって殺した男の人もいるんだ。君も全財産をくれたら今すぐにでも殺してあげるんだけど』

 その時、彼は笑ってました。

 それを聞いて、私はちょっと冷めてしまったんですね。彼からのメッセージを無視するようなことも続いて……。その頃、彼が何かに焦っているような印象もありました。私に『人を殺した』と明かしてから、『電話してもいい?』とメッセージを送ってもなかなか返信がなくて、電話が繋がりづらくなった。電話に出ても、『ちょっと待ってて』と言うなり切られてしまい、折り返すまで時間がかかる。しかも、ようやく掛かってきたと思ったら『どうしたの? 何か用?』と慌てた様子で問い詰められました。

 でも、関係自体は続いていて、正直に言うと、来年の2月くらいから彼のアパートで同棲する約束もしていました。旅行に行く約束もあったし……」

誕生日の約束

「彼とは10月中に会う予定になっていました。でも、どうしても都合がつかなくなって流れたんです。それで、『10月31日』に改めて会う約束をしました。その日は私の21歳の誕生日でした。ただ、彼とはその直前から連絡がつかなくなってしまいました。

 私の送ったメッセージに対して、最後に既読がついたのは10月29日のことです。彼からは、27日の深夜に『洗脳の世界』(キャスリーン・テイラー著)の写真が送られてきました。私が以前、洗脳に興味があると話したから探してくれたんだと思います。その後に『ヒゲ全ゾリした』というメッセージが届き、私は29日に『すっきりだね』と入れました。それが彼との最後のやり取りです。

 そして、31日の晩になって、今回の事件についての報道をはじめて目にしました。その時、ハッとしたんです。いつか彼が話していたアパートの場所が事件現場と近かった。しかも、ニュース番組は『自殺サイトが関係か』と報じている。彼なら何か知ってるかもしれない。そう思って『聞きたいことがあるんだけど?』とメッセージを送りました。でも、一向に既読がつかないし、電話にも全く出なかった。

 もしかして、と思いました。

 彼は何度も『人を殺した』と言ってたし、ついに見つかったんじゃないか。そう考えたら、体中に震えが走って……。

 でも、その時はまだ、犯人の顔写真までは報じられていなかったので、信じようと思った。違うかもしれないって。

 それからまもなくでした。ニュース番組で顔写真が流れたんです。それは、彼が私に送ってくれた自撮り写真と同一人物でした。もう、本当にびっくりしたとしか言えません。もし、事件が発覚する前に彼のアパートを訪れていたらと思うと、ただただ怖いです。あと数日違っていたら自分も……、と」

 白石は新たにこんな供述をしている。「自分にも自殺願望があるとツイートしたけど、ウソです。お酒や睡眠薬でリラックスさせてから殺しました」

 仮に彼女が白石のアパートを訪れていたら――。その結末は想像に難くない。白石の部屋には人間の頭部も骨も入っていない収納容器が、もうひとつ残されていたという。

 ***

 全文は『新潮45』12月号に5ページにわたり掲載。彼女とのやりとりを通じて見えてくる白石隆浩の姿を、さらに詳しく伝える。

新潮45編集部