砂上の楼閣? サウジ皇太子の“57兆円未来都市”構想

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 AIやIoTを駆使し、太陽光や風力による自然エネルギーを利用して、食糧や水の問題も先端テクノロジーで解決。国際的なイノベーションを育成して――。

 最新コンセプトをただ並べただけにも見えるが、これこそ「NEOM」なる都市計画。サウジアラビアのムハンマド皇太子(32)が10月24日に発表した、なんと総額5000億ドル(約57兆円)の巨大プロジェクトだ。

「首都リヤドに、IMFのラガルド専務理事など金融専門家、投資家を世界中から招いて大規模な経済フォーラムを開催。そこで計画を披露して投資を呼びかけたのです」(経済誌記者)

 計画の責任者として紹介されたのは、独シーメンスや米アルミ業界最大手アルコアのCEOだったクラインフェルト氏(59)。皇太子の隣には、サウジが450億ドルを投資するファンドも運営する、あの孫正義氏の姿も。

「NEOMの計画地は、紅海の最奥部アカバ湾の海岸線468キロ超に沿ったサウジ西北部で、ヨルダン、エジプト、イスラエルとの国境地帯。総面積2万6500平方キロというのは、約4000万人が住む我が日本の関東平野の1・5倍の広さにあたります」(同)

 砂漠の土地はタダ同然だが、大風呂敷が過ぎると現代イスラム研究センターの宮田律理事長も言う。

「壮大な未来構想を打ち立てることで、穏健なイスラムを演出。国際社会の信頼も得て中東の盟主たらんとしているのでしょう。もっとも、あの国も人口増で貧困や格差の問題は大きくなる一方。低迷する石油価格がもう一段下落するだけでも、計画は吹き飛びます」

 同じく中東のアブダビでは、脱石油時代を睨んでもう10年前からマスダールシティーという未来都市を建設しているが、たった6・5平方キロの計画でもまだ完成にはほど遠い。

 現国王の認知症も噂される中、代替わりを意識した皇太子の驕りと焦りが一挙に出たような話なのだ。

週刊新潮 2017年11月9日神帰月増大号掲載

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