大物漫画家2人の共作 喧嘩にならないワケ

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「コメンダトーレ」が持つ、意外な「別の意味」

 式の終了後、ヤマザキ氏に叙勲の感想を訊ねると、意外な答えが返ってきた。

「頂いた『コメンダトーレ』ですが、この語は俗に日本語でいう『よっ、社長!』とか『シャチョウサーン』というニュアンスもあるんですよ(笑) 『今夜は俺がおごる』と宣言して、『よっ、コメンダトーレ!』という感じですかね。だから夫も息子も『よりによってコメンダトーレか』と大笑いしていました」

 ヤマザキ氏の夫は「古代ローマオタク」のイタリア人なのだ。しかし、だからこそヤマザキ氏に浮かぶ華やかな微笑は、受賞の喜びも含まれているのではないだろうか。

「『凄い勲章を頂いた』という喜びより、『まだ私には、出すべきものが出せていない、まだ学ぶべきことが沢山ある』という思いが上回ります。それこそ『プリニウス』の連載も終わり、かなりの仕事を成し遂げたと実感できる境地に達したら、もっと素直に感激できるかもしれません」

 ヤマザキ氏の“原点”は14歳の時。母親に勧められて1カ月、一人でドイツとフランスを回ると、出会ったイタリア人男性に家出少女と誤解されてしまう。

「絵の勉強をするためにドイツとフランスを旅行している」と説明すると、「なぜイタリアが入っていないのだ!」と叱られる。その男性が身元引受人となってくれたことで、ヤマザキ氏はフィレンツェへの留学が可能になった。

 その男性が、14歳のヤマザキ氏に「書きとめろ」と命じたのが「All roads lead to Rome」つまり「すべての道はローマに通ず」だ。

「10代からイタリアと格闘を続けたことで、今、勲章を頂けたんだと思います。私の人格のうち、かなりの部分がイタリアの生活で形作られました。イタリアを知ったことで、世界を多角的に見る術も学びました。古代ローマの魅力を、漫画という表現手段で面白く広めていることを、イタリア政府が評価してくれたことが嬉しいですね」

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