英国で大評判「北斎展」が江戸に里帰りしないワケ

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 大阪市の「あべのハルカス美術館」で「北斎─富士を超えて─」が開催されている(11月19日まで)。

 主催関係者が言う。

「この北斎展は、大英博物館との国際共同プロジェクトで、10万人の来場者数を見込んでいます。ロンドンでは特別展『北斎─大波の彼方へ』として5月の開幕から8月13日まで満員御礼の大盛況でした」

 大英博物館での北斎展は69年ぶり。3カ月で約15万人の入場者を集めたという。

「英国では大規模な個展の場合、3カ月の期間は珍しくありません。しかし、日本では6週間がいいところ。会場の都合と大英博物館との契約もあって、大阪だけの開催となりました」(同)

 本展では、北斎の晩年30年に焦点を当て、「富嶽三十六景」などの著名な版画はむろん、「肉筆画帖」や「桜(さくら)に鷲図(わしず)」など肉筆画を中心に世界中から約200点の作品が集められた。これだけの大プロジェクトが実現すること自体、極めて希少性が高いと絶賛されている。

「話は約20年前に遡ります。大英博物館の日本セクション長ティモシー・クラークと私が企画した日本画の展覧会を成功裏に終えられたとき“いつか北斎を”と、夢を語り合ったのです。具体化したのは6年ほど前。これだけの作品を集めるのは本当に大変でした」

 と、あべのハルカス美術館館長で北斎研究の第一人者でもある浅野秀剛さん。

「そうした人間関係もあって、大阪の開催になったのです。もちろん東京からのオファーもありましたが、契約上の問題など諸事情で実現しませんでした」

 晩年の30年の画業に焦点を絞ったわけは?

「ティモシーと私の意見が一致した結果です。北斎は歳をとるに従い版画から離れていきました。彫り師や刷り師、版元が複雑に絡む版画より、自分の筆でパーフェクトかつトータルに表現できる“肉筆画”へ傾倒するのです」(同)

 今回は“おんな北斎”の異名をとる娘・応為(おうい)の作品も6点が出展。“お江戸”東京で開催されないのが寂しい限り。北斎も無念でありましょう。

週刊新潮 2017年10月19日号掲載

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