制作期間1年をかけた高額プレゼントに読者垂涎「夢のような企画」「ハロウィンで着る」

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 ヴィクトリア朝ドレスと聞いて、ピンと来るかたはどれほどいるだろうか。ヴィクトリア時代とは、ヴィクトリア女王がイギリスを統治していた1837年から1901年を指し、イギリス帝国の絶頂期であるとみなされている。森薫さんによる大人気の英国メイド漫画『エマ』もこの頃の英国貴族の館が舞台だ。

 その時代のドレスであれば、さぞやゴージャスでボリューミーで、煌びやかなものだと想像するだろう。

 しかし、ヴィクトリア朝ドレスといっても、実は一言では言い表せない。この63年間に、ドレスの流行はめまぐるしく変化。スカートを大きく広げる「クリノリン」から、腰の後ろを膨らませる「バッスル」の使用、丸く大きく膨らんだ袖、やがて全体がタイトなシルエットへと、様々な装飾が好まれていったという。

 そんな時代のセンスに敏感に反応し、お洒落を楽しんだ当時の貴婦人たちも羨むような夢のドレスを、制作費50万円をかけてオーダーメイドでプレゼントするという企画が、小説『オークブリッジ邸の笑わない貴婦人』(太田紫織著・新潮文庫nex)の刊行を記念し行われ「イギリス大好きな私としては、こんな夢のような企画!」「ハロウィンやクリスマスに着たい。エマの世界みたいで可愛い」と話題となった。同作は、ドラマ化もした『櫻子さんの足下には死体が埋まっている』の次に太田さんが手がけた新シリーズだ。

 約600件の応募者の中から、埼玉県に住む30歳女性Sさんが見事当選。杉野服飾大学と株式会社エブリスタの協力のもと、制作期間約1年を経て、今年ようやくその本格ドレスが完成したのである。

 そのドレスがこれだ(写真)。主に1870~90年頃の首元や袖、裾まわり、またスカートのシルエットが比較的すっきりとしたドレスを参考に制作。また、小柄なSさんのため、スカートにかけて縦のラインに目が行くよう、柄の入った生地と無地の生地とを組み合わせたデザインに。ひとりでも着やすいように上下別の仕様になっている。

 制作チームの瀧川美佐子講師によると、「ヴィクトリア朝ドレスとはいえ現代人が着るので、着やすい洋服であることを前提にしたうえで、いかにその時代らしさを出すかを工夫しました。また、せっかくのフルオーダーの企画であることから、当選者の好みを活かし個性が引き立つよう、心掛けました」

 大のヴィクトリア朝マニアである太田さんも、完成したドレスを見て「『オークブリッジ邸』の物語が現実になったようで、感動しました」と、大喜び。

 当選者のSさんも「『体型のここが気になる』、『こんな装飾が欲しい』など、ヴィクトリア朝の婦人方もきっとそんなことを仕立て屋さんと話しながらドレスを作ったのではないでしょうか。打ち合わせに行く日々は、束の間19世紀の貴婦人になれる、私にとってのオークブリッジ邸とも言える愛おしい時間でした」と感激の声を寄せた。

 時代とともに移りゆくファッション。だが、ドレスはいつの時代も女性たちを魅了してやまないようだ。

デイリー新潮編集部

2017年9月26日掲載

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