細工は流々で「日本郵政株」追加売却の“落し穴”

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日銀が買い支え

 セールストークだけに眉に唾を付けた方がいいかもしれない。だが、エコノミストもこう同調する。

「日本郵政は、9月5日に日経平均を構成する225銘柄に採用されました。日本銀行が大量のETFを購入しているので、株価が上昇する可能性が高いのです」

 ETFとは上場投資信託のこと。株価の指標と連動した金融商品で、日銀は先の225銘柄を対象にした「日経225」などのETFを年間6兆円購入している。「日経225」が上昇するということは、ほぼ間違いなく225銘柄の株価上昇を意味する。

 日経新聞は225銘柄の選定を“産業間のバランスを考えている”としているが、マーケット関係者の間では“財務省の意向が強く働いた”と囁かれているという。

「そもそも日本郵政株の売却益は、東日本大震災の復興費用4兆円の財源に充てられることが決まっています。今回の追加売却で、財務省の保有率は約80%から60%弱まで低下しますが、郵政民営化法の関係で2023年までに30%台に引き下げなくてはならないのです。財務省は残りの保有株を高値で売却するためにも、日本郵政の株価に注意を払い続けると思います」(同)

 財務省の“細工”は流々かもしれないが、経済誌デスクはこう警告する。

「上場企業の配当利回りが平均約1・6%なのに対して、日本郵政は約3・6%。高利回りの配当は魅力的だが、郵便事業は高コスト体質で、今後の事業展開もまったく描けていない。来年度、日本郵政は新中期経営計画を策定するが、そこで収益を産む新事業を発表できなければ、失望感から株を手放す投資家が増えて株価が急落する可能性も否めません」

 NTT株で大火傷をした経験を持つ投資家は少なくないはず。あの時のことを思い出してから、手を出した方がよさそうだ。

週刊新潮 2017年9月28日号掲載

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