北朝鮮の「核ミサイル」を迎撃できない現実 “新兵器”を押し付け合う陸海空

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800億円「陸上型イージス」

 8月31日に防衛省が発表した18年度予算の概算要求は、過去最高となる5兆2551億円。6年連続の増額で、中でも目を引くのが「陸上型イージス」といわれる、米国が開発した弾道ミサイル防衛のイージス・アショアである。今回盛り込まれた導入費は、項目のみの「事項要求」。具体的な金額は年末の予算編成で決められる見通しだ。

 が、1基あたり800億円と推定されるこの新兵器が、むろん直ちに導入されるわけではない。

「北朝鮮はICBMを日本に向けて撃たないという見方もありますが、上空を通過する際、ブーストに使った1段目のロケットが墜ちてくる可能性はある。現在のイージス艦によるミサイル監視任務は、本来なら他で使うべき艦を日本海に常駐させねばならず、海自の負担が大きい。その間はまともに訓練もできません」(同)

 そこで陸上型イージスが待たれるのだが、イージスシステムで発射する迎撃ミサイルSM3は、現行のブロック1では500キロを超える高度には届かない。開発中のブロック2Aも1000キロ以上に有効ではあるものの前述のロフテッド軌道には対応できず、配備にも1~2年を要する。そして、それ以前に、

「陸上型のため設置用の土地が必要ですが、イージスシステムを支える『SPY─1レーダー』は高出力の電波。もし人に照射したら大事故につながり、広い土地とともに環境アセスメントも欠かせない。用地取得費や維持管理費などを合わせれば、予算は雪だるま式に膨れ上がり、いかに急いでも数年はかかります」(同)

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