金正恩が高笑い… 撃ち落とせない「北朝鮮弾道ミサイル」

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 さすがにグアムの辺りを狙うのはおっかないが、日本ならちょうどいい……。そんな思惑が透けて見えるミサイル発射だった。なめられたものだが、Jアラートは一部で機能せず、ミサイル迎撃も事実上不可能。金正恩の高笑いだけが聞こえて来るのだ。

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〈ミサイル発射。ミサイル発射。北朝鮮からミサイルが発射された模様です。頑丈な建物や地下に避難して下さい〉

 日本各地に設置された防災行政無線のスピーカーから、避難を呼びかけた無機質な音声が響いたのは、8月29日早朝。北朝鮮からミサイルが発射された直後だった。

 防衛省担当記者が言う。

「午前5時58分に北朝鮮の西岸から発射されたミサイルは6時7分頃に襟裳岬上空を通過、12分に岬から東約1180キロ沖の太平洋上に落下しました。ミサイルは火星12型という中距離型と目されています」

 早稲田大学の重村智計名誉教授は指摘する。

「今回、グアムを狙わず、日本を越えて太平洋沖に撃ったのは、アメリカからの反撃を恐れたため。金正恩にすれば今回の発射が国内向けのアピールになる。現在行われている米韓軍事演習が北朝鮮のミサイルによって終結した、と主張することができますからね」

 高笑いする金正恩の顔が思い浮かぶ。6時2分、テレビ各局は、真っ黒な画面にミサイル発射と避難を呼びかける文字が浮かぶ映像を流したが、

「これはJアラートと呼ばれる全国瞬時警報システムが作動したためです」

 と、管轄する消防庁関係者が言う。

「2007年に運用を開始したこのシステムは地震や津波のほか、ミサイルが発射された際にも作動します。携帯会社にも通知され、ミサイルが落下もしくは通過する可能性のある各自治体に人工衛星などを通じ伝達。各地の防災行政無線のスピーカーからサイレンと音声が流れます。今回は、北は北海道、西は長野まで12道県で作動しました」

 それが冒頭紹介した音声だ。だが、実は住民への避難を周知するはずのこのシステムに重大な綻びが……。

「Jアラートが作動すると、町内に50機設置されているスピーカーが自動的に起動し、避難を呼びかけます。しかし、今回は起動せず、音声が流れませんでした。原因は調査中です」(ミサイルが通過した北海道えりも町の担当者)

 つまり、この町でテレビや携帯から情報を受け取れなかった人は、ミサイルが上空を通過したことすら気付かなかった。他にもシステムに不具合があった自治体が多数あったという。しかし、たとえ防災スピーカーを聞いたとしても何ができるのか。別の自治体の防災担当者が嘆く。

「政府はアラート作動後、鉄筋コンクリートの頑丈な建物や地下に避難することを推奨していますが、地方では地下施設を備えた頑丈な建物などありません。Jアラートの通知から着弾までのわずか数分という時間を考えれば、自宅で窓から離れて身を伏せることくらいしかできないのです」

 Jアラートが頼りにならないとすれば、事前に撃ち落とすしか防衛策はないことになる。

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