「グリコ・森永事件」で地を這った特殊班 現職を退いた刑事らが明かす秘話

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捜査態勢

 人質誘拐や企業恐喝事件など、いわゆる“動いている事件”を担当する特殊班の捜査では、犯人の出方次第で、当然のことながら捜査員の動き方も変わってくる。あらかじめいくつかのシナリオを用意しておくのが普通だ。

 このケースでも“車編”から“電車編”にシナリオが替わったに過ぎないともいえる。ただ特殊班にとってベストなシナリオではなかったことは事実だろう。

 当夜の捜査網について捜査幹部が説明する。

「まず、マルケイ(常務役の捜査員)と、その身辺警護を担当する者が1名。そして、この2人を視認できる位置にアベックを装った捜査員2名が配置された。さらに不測の事態にも対応できるよう、別に2名が同乗。マルケイの近くで団子にならないよう、捜査員たちは、それぞれ距離をあけながら犯人の次の一手に全神経を集中させていました」

 電車に乗り込んだのはマルケイを除き、計5人の捜査員。さらに捜査車両やバイク部隊が電車と併走しながら追尾する。

 各捜査員にはL2(リーダー・ツー)と呼ばれる指揮車両から無線で指示が飛ばされる。もっとも、L2が単独で命令を発することは少なく、基本的には捜査本部(L1)と現場を中継する役目を担う。

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