赤ちゃんより画面に夢中の母親… “脳の麻薬”スマホがもたらす未来

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ヒトの進化が終わる?

 もっとも、絶望的かというとそうではありません。やめれば戻るからです。LINE等の場合は戻りは悪いですけど、スマホ全体で見たらやめれば戻りますし、脳というのは良い刺激を入れれば、良い変化が何歳からでも起こるものなのです。

 例えば読書させると脳の発達がよくなるんですよ。それは脳の形態からわかっています。

 努力をすればちゃんと脳も変わっていく。でも、スマホをやめないと、どんどん悪い方向に落ちていく。

 それは家庭の世帯収入の多寡とか教育熱心であるかないかに拘らず、です。

 要するに子供のうちはなるべくスマホを使わせない方がいいですし、使うのであればリスクがあるのを知った上でそうしてほしい。

 そこから先の制御をするには法的な規制しかないと思っています。けれど、今の社会構造の中で、こういう通信事業体が経済の中心にありますから、彼らが経済の主役から滑り落ちるまではおそらく、国として規制できないだろうと私は思っている。

 とはいえ、悪い影響があると知らしめるのが私たちの責任だなと思っているんです。なにしろ見つけちゃったので。 

 スマホで何でもできるって便利で楽なんですよ。頭も体も使わないということですから。そんな状況に長い時間浸っていると、やっぱり子供でいうと発達が遅くなるし、大人でいうと老化が早くなる。私たちの調査結果にしても、そういったごくごく当たり前の事態が起きているだけかなと思います。

 人間は楽で便利を求めるという方向で文明を発展させてきました。その究極の状態が実現しつつあるというのは、もしかすると、ヒトの進化が終わる時期にさしかかっている、そんな気もします。

「赤ちゃんが泣きやむアプリ」が流行するなどその最たる例でしょう。頭も体も使わないのが楽な育児だということになりますから。

 でも考えて頂きたい。「育児が大変で手が回らないからスマホを使わなきゃいけない」というのは本当にここ最近の傾向なのです。我々が常識だと思っているものは、今だけのすごく特別な話で、ヒトの歴史の中では常識でも何でもないというところに、改めて立ち返らないといけないのではないでしょうか。

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川島隆太(かわしま・りゅうた)
東北大学加齢医学研究所・所長。1959年生まれ。85年、東北大医学部卒。研究テーマは脳機能イメージング、脳機能開発研究。任天堂と組んだDS用ソフト「脳トレ」が爆発的なヒットを生んだ。

週刊新潮 2017年5月18日菖蒲月増大号掲載

特別読物「小中学生7万人を調査!成績急降下!! 『脳トレ』教授が語る『スマホ』は脳の麻薬」より

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