仮釈放のOJシンプソン 獄中も娑婆も優雅な暮らし

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 あのO・J・シンプソン(70)が娑婆に――という話には少し復習が必要だろう。

「現代アメリカを体現した人物ですね。アメフトの名選手として活躍する黒人青年は、70年代のアメリカンドリームそのものでした」

 と米文化に詳しい越智道雄明治大学名誉教授は言う。

 引退後も解説者や俳優として人気だったが、1994年に元妻とその男友達の殺害容疑で逮捕される衝撃の事件が起こる。

「この裁判もじつにアメリカ的。状況証拠では真っ黒なのに、人種問題が絡んだことで全米注目の“世紀の裁判”になってしまう。そして、高額で集めた弁護団によって無罪を勝ち取ったのも象徴的でした」(同)

 ところが、遺族の訴えによる民事裁判では敗訴。数百万ドル単位の負債を抱えたと言われる。

 そして2007年には、自分が売り払ったトロフィーなどを取り返そうとラスベガスのホテルへ押し入り逮捕。翌年「9年~33年の懲役刑」が確定する。

“9年~”というのは仮釈放が認められる最短年限。つまり、模範囚のOJは今回、更生委員会の審査で、最速の出所を決めたのだ。

 服役するネバダ州ラブロック刑務所は、“鉄条網に囲まれたクルーズ船”と言われるほど囚人にとって環境の良い施設。有名人のOJは、さらに他の囚人から厚遇され、食事の列も割り込み自由。同室者などは召使いも同然だった。

 しかし、負債も残り、今後は過酷な生活が……、と思えばこれがそうでもない。

「米国のプロスポーツは年金制度が充実。しかも、差し押さえなどはできない仕組みになっているのです」(在米スポーツ記者)

 米紙などが年金規約に沿って試算したところでは、支給額は月に約1万ドルにもなる。

「しかも65歳からの支給開始であれば、出所までに60万ドルほどがすでに溜まっているはずです」(同)

 故郷のサンフランシスコでは、州法で居住中の邸宅の差し押さえも難しい。結構良い暮らしが待っているのだ。

週刊新潮 2017年8月3日号掲載

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