700種のばい菌が1000倍に増殖 就寝中の「誤嚥性肺炎」唾液リスク

ドクター新潮 医療 肺炎

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 肺内で増殖し、命までも吸い取ってしまう細菌は、言うまでもなく我々の口腔が起点となっている。まさしく「健康は歯から」で、マウスケアを疎かにすれば、取り返しのつかない事態を招くことになるのだ。

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就寝中に増殖(写真はイメージ)

 神戸常盤大学短期大学部口腔保健学科の足立了平教授は、

「健康な人ならば口内の菌が誤って肺に入っても、直ちに誤嚥性肺炎は発症しません。どういう方が危ないかといえば、まず高齢者など免疫力が落ちた人です。他の発症要因としては誤嚥が日常的にあること、それから口の中の汚れ。この3つが大きな原因となります」

 脳血管障害などを持つ高齢者は、本人が気づかないまま、寝ている間に唾液が少しずつ、気道を経て肺へと流れ込んでしまう。こうした現象は「不顕性誤嚥」と呼ばれる。

 そもそも口の中は細菌の温床であり、さらに免疫力が低下しているとあっては由々しき事態である。鶴見大学歯学部の花田信弘教授(探索歯学講座)が言う。

「唾液の誤嚥が肺炎につながるのは、口腔内の界面に集まった細菌が塊となって形成された多糖体『バイオフィルム』が、気道に入り込んでしまうからです。ここには約700種の細菌がいるとされています。歯を磨かずに放置していると、この中で異なる細菌同士、薬剤耐性遺伝子の交換がなされてしまうのです」

 さらには、こんな“現実”とも隣り合わせだという。

「就寝中は唾液の分泌が止まり、唾液の浄化作用が働かなくなります。このため、細菌は一晩で1000倍ほどに増殖してしまうのです。これを取り除かずに朝食を摂ると、細菌はすべて腸内に入り込んでしまいます」

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