地方出身女子大生はなぜ風俗店で働くのか 前川前次官に読んでほしいレポート

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ホステスは実はハードルが高い

 当然のことながら、働く理由はほとんどが経済的理由であって、それは普通の仕事であっても、風俗でも同じことである。

「いきなり風俗嬢にならなくても、ホステスやキャバ嬢でいいのでは」

 そう思う方もいるだろうが、そうした仕事はまず酒を飲めなくてはならず、未成年は論外である。

 しかも、勤務時間が深夜にまで及ぶので学生や兼業者にはハードルが高い。

 一方で、性風俗店は時間の融通が利くうえ、日払いなのですぐにお金になるのだ。

 実家暮らしであれば、生活費をあまり心配しなくてもいいケースが多いが、苦しいのは地方出身の学生。風俗という道を歩むのは、圧倒的に地方出身者が多いという。

 長引くデフレの影響か、学生への仕送りは長い間減少傾向にあった。

 1996年には10万円以上だった仕送り平均月額が、2013年には7万円台となっているのだ。東京など都心部では家賃でほとんど消える金額である。

 中村氏は、慶応大学在学中にソープ嬢をやっていた女性からこんな話を聞いている。

「地方から勉強しに来ると本当にお金がかかるから、真面目に勉強したい、ちゃんと就職したいって女の子ほど風俗を選択する」

 この女性は卒業後、現在は一部上場企業に勤めている。

家庭教師ではまかなえない

 ここでまた、こんな疑問がわくかもしれない。

「いい大学なんだから、塾講師とか家庭教師とかあるでしょうに」

 ところが、これも結構難しい。関西の国立大学に通いながら、風俗店勤務の女性の声が紹介されている。彼女は実家が東北で、家計が苦しいので自分である程度稼がなくてはいけない状況だった。

 家庭教師などは一般のアルバイトよりも時給がいいのだが、問題はそう長時間は働けないという点だ。

「1年生のときは、家庭教師と塾講師と携帯販売の仕事を掛け持ちでしていました。家庭教師も塾講師も時給1500~1800円くらい。

 週5、6回働いても12万円くらいにしかならなかった。公務員試験を受けようと思っているので、授業は最優先、かなり無理をしてもそれくらい稼ぐのが限界ですね。

 風俗を始めたのは、やっぱり親になにも頼れない環境で大学生をしているから」

 この問題を長年取材してきた中村氏は、同書で女子大生のみならず主婦などがなぜ風俗で働くようになったのか、数多くの肉声を紹介している。その中には、前次官と同窓、東大生までいるのだ。

 こうした先行者の研究を鵜呑みにせずに、自ら生の声を聞こうという前次官の姿勢は、ある意味では評価できるのかもしれない。また、単に観察者としてかかわるのではなく、ときには自らお小遣いも渡していたというのだから、その篤志を評価する向きもいるのかもしれない。

 惜しむらくは、現状、「調査」がどのように文部科学行政に活かされたのかが不明な点であろうか。

デイリー新潮編集部

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