民進党は「安倍政権下の憲法改正に絶対反対」路線を突っ走っていいのか

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民進党の野田佳彦幹事長

 政治家が著書を出版するということには、デメリットとメリットがある。

 自身の政策を書物に残せば言行不一致や変節を指摘される可能性は高くなる。場合によっては、国会の質疑でも「前に書いたことと違うじゃないか」と追及されかねない。これはデメリットだろう。

 一方で本が売れれば印税が入るし、知名度も上がる。何より自身の政策や人柄が広まるのは、大きなメリットである。また著者自身が政治を志した頃の熱い思いを記すことにより、後になって振り返り初志を貫徹できているのか、自らを省みることができる。

 さて、ここでご紹介するのは、民進党の野田佳彦幹事長が、総理大臣になる前に著した『民主の敵』という著書だ。政権交代に賭ける思いや、「自衛官の倅」としての安保論などが盛り込まれた一冊である。

 この本では、野田氏の憲法や自衛隊に関する考え方も述べられている。いくつかご紹介してみよう。

「集団的自衛権をフリーハンドで行使できるようにするべきであるというような、乱暴な話は論外です。しかし、いざというときは集団的自衛権の行使に相当することもやらざるを得ないことは、現実的に起こりうるわけです。

 ですから、原則としては、やはり認めるべきだと思います。認めた上で、乱用されないように、歯止めをかける手段をどのように用意しておくべきかという議論が大切になっていくわけです。

 やはり、実行部隊としての自衛隊をきっちりと憲法の中で位置づけなければいけません。

 いつまでたってもぬえのような存在にしてはならないのです」

「自衛隊などといっているのは国内だけで、外国から見たら日本軍です。

 その現実をふまえた上で、戦前の恐怖が国民にも周辺諸国にもあるのは隠しようのない事実なのですから、シビリアンコントロールのことも含めて、暴走する可能性をどうすれば抑止することができるのか、あらゆるルールをつくろうではないか、というのが、私の率直な思いです。

 国内での自衛隊の位置づけを明確にする。その上で、国際的な枠組みの中で自衛隊をどう活かしていくのかを考えるべきです」

「自衛隊論議はその最たるものですが、条文の解釈で問題を凌いでいくというやり方は、かえって危ないのです。恣意的な判断が入り込む可能性が出てくるわけですから」

「憲法論議は、少し盛り上がるとすぐにフニャフニャと腰砕けになる歴史の繰り返しでしたが、世代交代が進むにつれて柔軟性を持ってきている感じがしますので、もう一息なのかもしれません」

 こうした主張と、現在、安倍首相(または安倍総裁)が提唱していることとの違いを見出すのは一般人には難しいところだろう。

 実は野田氏も含めて、憲法改正を主張していた議員が多くいることもあってか、いまだに民進党では9条に関する党の統一見解をまとめていない。それどころか、野田幹事長は、「いつまでに、どのようにまとめるというところまでは考えていない」とも語っている。

 また、蓮舫代表は、9条の改正については緊急性がないという見解を示している。「安倍政権での改憲は反対」という路線を走る可能性は高そうだ。

 しかし、「非武装中立論」などが幅をきかせていた時代とは異なり、すでに自衛隊の存在意義は多くの国民から認められているところである。安倍案の良し悪しは別として、「現政権なら何でも反対」路線よりは、野田氏の原点ともいえる憲法観をベースに正面から議論をしたほうが支持率のアップにはつながるのではないだろうか。

デイリー新潮編集部

2017年6月2日掲載

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