肺がんステージ4だった大林宣彦監督 構想40年の新作

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 4月末、大林宣彦監督(79)の最新作のスタッフ向け試写会が都内で行われた。

「戦前の佐賀県唐津市を舞台にした青春群像劇で『花筐(はなかたみ)』という3時間もの大作なんですが、上映前に大林監督が挨拶に立ったんです。すると“昨年8月のロケ開始直前に、肺がんのステージ4で余命6カ月と宣告された”と言うので驚きました。少しやつれて見えたけど、元気そうでしたからね」(関係者)

 すでに医者の言う寿命は過ぎている。だが、この新作にかける思いは並々ならぬものだったようなのだ。

 事情通が語る。

「同名の原作は檀一雄(1912~76)が37年に発表した初期作で、三島由紀夫が絶賛した作品としても知られています。舞台は架空の町とされていますが、実は唐津をイメージしていたと確認したのが大林監督。まだ自主映画やCM監督として活動していた頃に、この作品の映画化を思いつき、福岡の能古島(のこのしま)で晩年を過ごす檀さんを訪ねて許可をもらい、唐津を巡り、シナリオも書き上げていたのです」

 監督は劇場デビュー作としてこの作品を考えていた。が、77年に公開されたのは、池上季実子のヌードも拝めるコメディホラー「HOUSE ハウス」だった。

 その後「転校生」「時をかける少女」「さびしんぼう」といわゆる尾道三部作でファンを増やし、近年は古里映画と称して地域に根ざした作品を発表していた。

「その集大成と言えるのが『花筐』かもしれません。構想は実に40年、唐津でも製作推進委員会を発足させるなど、全面協力し、募金やふるさと納税を通じ撮影資金1億円を集めました。延べ2000人のエキストラと900人のボランティアも参加したんです」(同)

 出演は満島真之介、窪塚俊介、常盤貴子、門脇麦、武田鉄矢など。公開は年末で正月映画になる予定だ。

 一昨年、唐津で「年をとるのは悪いことではない。初心に戻れる。死ぬ前に檀さんとの約束を果たしたい」と語った大林監督。公開までもう一息である。

週刊新潮 2017年5月18日菖蒲月増大号掲載

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