金正恩、ひと月3人ペースで処刑 「パラノイア」「ヒトラー」傾倒の指摘も

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パラノイアとヒトラー

 こうした彼の性向を生んだのは、一体何か。

 講演で高氏は言及しなかったものの、専門家がこれを補うと、

「独裁体制でナンバー2がいない。合議制もないので、強権的手法にならざるを得ない」(デイリーNKジャパン・高英起編集長)

「祖父や父と違い、突然トップになった男。統治に自信が持てない。党内基盤が脆弱なので恐怖を味わわせ、権威を見せつけるしかない」(龍谷大・李相哲教授)

 といった組織構造的な分析がある一方で、

「パラノイア(偏執狂)といってよいでしょう。背景には、在日のしかも愛人の子というコンプレックスがあると思います」(コリア国際研究所・朴斗鎮所長)

「就任1年目の誕生日の際、贈り物へのお礼として、幹部に『わが闘争』を1冊ずつ配っている。つまり、ヒトラーに傾倒した、危険思想の持ち主なのです」(関西大学・李英和教授)

 など、そもそもの人格破綻を突く声もある。

 いずれにせよ、彼をトップに頂いて5年余り。北朝鮮が危機の度合いを増していることは確か。

 高英煥氏の話に戻ると、

「人民の金日成への忠誠度を100とすれば、正日は、60~70、正恩は20~30に過ぎないと見られています」

 そのため、党には、面従腹背が横行しているという。

「殺されるのを恐れ、意見を何も言わない。机の上には『党がさせることだけをしろ』という心得が貼ってあるそうです。一方で、陰では正恩のことを『元帥』と呼ばず、『アイツ』とか『あの若造』と呼んでいる。見つかって咎められれば“いやいや、あの課長のことですよ”と誤魔化しています。海外にいる幹部などは、仕事を終えるとネットカフェに駆けこむそうです。で、私の名前などを検索し、先に逃げた人がどのような暮らしをしているのか調べている。ある脱北者は私の朝鮮日報のコラムまで読んでいたくらいで驚きました」

 他方、一般の人民は、

「配給制度はもはや崩壊し、チャンマダンという闇市に依存して生活している。ですからドルや元の獲得に必死になっています。韓流ドラマも秘かなブーム。みな中国へ出張に行った際などに徹夜で見ているため、脱北者は私より韓国ドラマに詳しかったりするのです」

 したがって、高氏はこう結論付けた。

「核やミサイルを放棄しない限り、国際社会の制裁は続く。国内では上から体制転換の動きが起きるかもしれないし、下からの圧力は高まっている。あの体制に先の見通しがないことだけは、はっきりしています」

 それが“いつ”なのか――。北の人民が自らの手で自らの“首”をすげかえることを祈るばかりである。

 願わくば、今すぐにでも。

週刊新潮 2017年5月4・11日ゴールデンウイーク特大号掲載

「軍大将を高射砲処刑でこっぱみじん! 元北朝鮮一等書記官が明かした『金正恩』クレージー逸話集」より

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