サラリーマン家庭にも身近なリスク 失敗の実例に学ぶ「相続税対策」

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■失敗の実例に学ぶ「相続税対策」(1)

もはや金持ちの「頭痛のタネ」では済まない

 東京23区では5人に1人が課税対象に――。税制改正の結果、サラリーマン家庭にも身近なリスクとなりつつある相続税。だが、節税ばかりに勤しんだ結果、子や孫に禍根を残すことも少なくないのだ。数々の失敗例を目にしてきたプロが明かす相続対策の神髄とは。フジ相続税理士法人代表社員の高原誠氏が解説する。

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 これまで、ほとんどの方々にとって「相続税」は対岸の火事だったと思います。事実、2014年に亡くなった日本人約127万人のうち、相続税の課税対象者はわずか4・4%に過ぎませんでした。しかし、15年1月の税制改正によって、相続税を巡る状況は様変わりしました。

 最近になって国税庁が公表した「改正元年」のデータに目を通せば、課税対象者が「激増」していることは明らかです。

 今回の税制改正により、相続税の基礎控除額は、

「5000万円+(1000万円×法定相続人の数)」

 から、

「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」

 に改められました。

 その結果、改正前は全国平均で4・4%だった課税対象者が、改正後の15年には8・0%に倍増。東京都内に限れば9・7%から15・7%にまで伸びています。さらに、23区内だけに絞った場合、この数字が20%近くに達することは間違いありません。端的に言えば、23区内で亡くなった5人に1人が、相続税の課税対象というわけです。

 もう少し具体的な例を挙げて説明しましょう。

 たとえば、準大手クラスの企業を定年退職して2000万~3000万円の退職金をもらい、23区内に40坪程度の土地を所有する方をイメージしてください。時価3000万円以上の不動産を持ち、しかも、年金で生活しているため、退職金は手つかずのまま銀行に預けている――。

 このような資産状況の男性が亡くなり、遺族は妻と子供2人だとします。先ほどの「3000万円+(600万円×法定相続人の数)」という数式に当てはめると、基礎控除額は4800万円。不動産と現金を合わせたら、優に基礎控除額を上回ってしまいます。

 つまり、いわゆる富裕層でなくとも、十分に相続税の課税対象となり得る時代が訪れたということ。

 実際、相続税に関する相談は激増しており、税理士業界全体が「相続税バブル」の様相を呈しています。

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