サラリーマン家庭にも身近なリスク 失敗の実例に学ぶ「相続税対策」

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■相続対策3つの柱

〈ケタ違いの金持ちや大地主だけでなく、ごく一般的なサラリーマン家庭にとっても相続税は身近な存在になりつつある。この一般人には未知のリスクに対して、どのように備えればよいのか。高原氏は最初に、素人が陥りがちな「落とし穴」の存在を指摘する〉

 相続対策と聞いて、一般の方が真っ先に思い浮かべるのは「節税」という言葉ではないでしょうか。確かに、これまで「相続税など無縁」と考えていた方も多いでしょうから、「なるべく払いたくない」という気持ちは分かります。

 しかし、現在の税制下で有効な節税方法も、5年後、10年後に効果が見込めるとは限りません。また、節税ばかりに気を取られると、親族間に禍根を残してしまう可能性もあるのです。

 そもそも、相続対策では、

○遺産分割対策

○納税資金対策

○節税対策

 の3つの柱が重要になります。この3本の柱を上から順番に検討していくのが、相続対策の基本中の基本。「節税対策」ではなく、「遺産分割対策」が最初の課題に挙げられるのは、相続で重視すべきは、何よりも「家族の円満」だからです。

 たとえば、ある一家の父親が亡くなった際に、実家の土地を誰が継承するのかという問題が浮上します。長男は自分が土地を相続するものと考えていたのに、次男は土地を売却して現金で等分すべきだと主張。親の死後にこうした思惑の食い違いが露呈し、子供同士がドロ沼の諍いに至った例は枚挙に暇(いとま)がありません。

 他方、親の生前から親子がきちんと話し合っていれば無用な混乱を避けることができます。それどころか、遺産分割が行われていなければ適用できない相続税節税の「特例」もあるので、円満な相続は結果的に節税にもなります。

 だからこそ、まずは「遺産分割」を第一に考えるべきなのです。最初の柱がきちんと整理できたら、次は「納税資金対策」です。その資金を賄うために土地を売却する、生命保険を充てるなど、具体的な内容を詰めておく必要があります。

 その上で、ようやく「節税対策」に至るのです。

 ***

(2)へつづく

特別読物「5人に1人が課税対象!『骨肉の争い』が倍増!! 失敗の実例に学ぶ『相続税対策』――高原誠(フジ相続税理士法人代表社員)」より

高原誠(たかはらまこと)
2005年に税理士登録。06年にフジ相続税理士法人を設立。相続に特化した専門事務所の代表税理士として、年間約600件の相続税申告・減額・還付業務を取り扱う。

週刊新潮 2017年4月20日号掲載

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