天性の骨格を上手く生かせない剛力彩芽に幸あれ(TVふうーん録)

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 彼女を初めて認識したのは、確か2011年のドラマ「IS〜男でも女でもない性〜」(テレ東)だった。ものすごい不思議なバランスの人だなと思った記憶が。たぶん芸能界でもズバ抜けて顔が小さいのだと思う。実寸は握りこぶしくらいじゃないかと。そのせいか、カツラを被ると異様に浮く。こんだけ働かされてるんだから、特注のカツラを作ってあげてほしいと懇願したくなる、それが剛力彩芽だ。

 あれよあれよと民放地上波ドラマの主役枠に収まり、童顔の割に難しい立ち位置を次々と強要され、ランチパックのCMでは笑顔のまま踊り狂い、本人念願の歌手活動も行う。そんなゴーリキちゃんは最近、深夜枠へと移行しつつある。ある種の浮遊感を漂わせて挑んだのが「レンタルの恋」(TBS)だった。人気ナンバーワンの高額レンタル彼女を演じるという時点でツッコミも入るのだが、その出自が謎という設定も「ああ、視聴者が知りたいと思わない謎もあるんだな」と。ゴーリキー、トリッキー。

 2時間モノでは非常によくある「大女優着せ替え人形ショー」要素を取り込み、ゴーリキちゃんはさまざまな扮装に挑む。初回から観る者を戸惑わせ、凍りつかせる。エヴァンゲリオンなどのアニメや、ロリータ扮装は、この国に計り知れない潜在的なニーズがあるだろうから、まあ、よいとして。スケバン刑事や金八先生、宗方コーチにオードリー・ヘプバーンの仮装には凄惨な痛々しさが。しかも完成度が異様に低いという。ゴーリキちゃんはもしかして嫌がらせをされているのか? このえげつない芸能界で嫌がらせをされているのか? 大丈夫? 心配。

(c)吉田潮

 前述したように、ゴーリキちゃんは頭の鉢が小さい。そのせいでカツラが合わない。イマドキの女子風の装いですら5ミリくらい浮く。イマドキっぽくないのだ。何億光年か先から来たような印象に。しかし、カブトムシに扮したときは、妙に合点がいった。人間じゃないほうがしっくり。そのミステリアスな骨格が適役だったのかなと思っている。ま、女じゃなかったっつうオチなんだけどさ。

 我らがゴーリキちゃんは、今後も謎の仮装枠を邁進するのだろう。4月からは女囚役を演じるそうだ。地球上で適合する役があるといいなぁ。密かに応援する。

 で「レンタルの恋」はデート嬢を斡旋する、ライトな風俗業が舞台となっている。限りなくグレーゾーンの風俗業を、コミカル&ライトタッチで描いているのだが、こういう需要と供給が日本経済の根っこにあるのかと思うと、なんかなぁ。男は女を金で買う。女は金が手に入るから虚像を演じる。ゴーリキちゃんの同僚レンタル彼女で、実は13人の子持ち母(劇中14人目を妊娠)を原幹恵が逞(たくま)しく演じていたのが印象的だった。

 男はどんどん妄想の世界へ。金さえ払えば思い通りになる夢の中へ。そして女は、どんどん厳しい現実へ。生活を、家族を守るために、あらゆる形態の、決して社会保障が厚くはない職種へ。なんてことを考えさせられた社会派作品だった(嘘)。

吉田潮(よしだ・うしお)
テレビ評論家、ライター、イラストレーター。1972年生まれの千葉県人。編集プロダクション勤務を経て、2001年よりフリーランスに。2010年より「週刊新潮」にて「TV ふうーん録」の連載を開始(※連載中)。主要なテレビ番組はほぼすべて視聴している。

週刊新潮 2017年4月6日号掲載