祖父と山本富士子が語る「宇野昌磨」 孫に受け継がれるDNA

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■フィギュア一筋「大女優」と祖父が占う「宇野昌磨」金メダルへの道(下)

公の場では初の対談という2人

「世界フィギュアスケート選手権」に先立ち行われた、フィギュアスケート界の新星・宇野昌磨(19)をめぐる対談である。大のフィギュアファンという女優の山本富士子さんと、宇野選手の祖父で洋画家の藤雄さん(90)は旧知の仲。藤雄さんは「昌磨の滑る姿を見て己の審美眼を確認しているのかも」と語る。

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山本富士子氏

山本:先生は代表作で舞妓さんを随分とお描きになってらっしゃいますね。

宇野:年間、40人以上は舞妓さんを描きますが、一心不乱に描き直していると飲まず食わずで10時間経っていることもあります。日本を代表するトヨタは、海外で自動車を販売していますが、僕はこれからは日本の伝統としての美意識、文化の先進性を絵画にしても訴える時代だと思っておりましてね。4月3日からドバイで個展をやりますが、出品する作品を1年かけて直したんです。これまで、パリのルーブルやロンドン、ニューヨークなど世界の様々なところで展示を行いましたが、中東では初めて。私の絵がどう受け入れられるか。齢90になりますが、どこまでやれるか自分の可能性に挑戦するつもりです。

山本:先生もチャレンジ精神に溢れていらっしゃいますね。そのDNAがお孫さんにも……。

宇野:鑑賞される時に、絵の前を通過されたら負けなんです。下手でもなんでも、見る人に“なんだろう”って、まず立ち止まってもらわないと話にならない。そうなって初めて、絵の奥行や世界観、苦労して描いたんだろうなぁということが見る人に感動となって伝わる。

山本:それと、絵画というのは“残る芸術”ですよね。音楽もそうですけど、後世に伝わっていくものだから、私は素直に尊敬してしまうんです。舞台って自分が生身で演じてみせることしかできない。そういう意味で儚いモノと言いますか、フィギュアも舞台も同じだなと思って共感するんです。

宇野:それから、山本さんから折々に頂戴するお手紙をみると、いつも素晴らしい言葉を残していらっしゃる。時季を交えながら思いを率直に綴っておられます。

山本:私はその時々の思いをノートに書き残すことが好きで、日々の生活の中で、ふっと思ったことや、またいい言葉やいい文章に出会った時は必ずノートに書き留めています。とにかく書くことが大好きなんです。

宇野:先ごろ月刊誌に寄稿された文章も素晴らしかった。また生まれても、亡くなられたご主人(作曲家の山本丈晴氏)と一緒になりたいと。そんなことを書ける人はなかなかありません。

山本:実は、6年前に亡くなった夫に宛てて、今でもメッセージカードを書いています。結婚して以来、お誕生日、結婚記念日、バレンタインなど、節目節目には必ずカードを送りあっていましたので、今でも同じように続けて書いています。この前のバレンタインの時も、チョコレートを選びカードをつけましてね。結婚記念日には、大切に保管している結婚衣装、丈晴さんのモーニングと私の衣装を自宅の部屋に飾ります。それで、手料理を作ってシャンパンを開けてお祝いする。すべて夫が生きていた頃と同じようにしています。長年のつきあいのある人達を呼んで夫を偲びながら楽しく過ごします。

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