「産むの?」発言でお役所を追及するNPOの“正義” 成果アピールのための会見

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「1対1で話すべきです」

 かように役所を戸惑わせたPOSSEはといえば、

「最初は、電話で女性から相談がありました。2月9日はまず、おひとりで行ってもらったところ、窓口で『高校生の息子さんはもっと働けないのか』『体調が悪くて仕事がきついと言うが、何とかならないか』などと言われて申請することができず、一旦退出した。で、近くで待っていた私たちと合流し、もう一度行ったら受理されたのです」(渡辺寛人事務局長)

 そうした“同伴申請”については、

「ほぼ毎週、各地の自治体に同行しています。一緒に行くと、役所の対応も全然違います。市原市は今回、明確な申請拒否はしていないと思いますが、こうした対応の仕方自体が、結果的に申請を妨げているということになります」(同)

 と、あたかも正義は我にありと言わんばかりだが、そもそも生活保護の原資とは税金である。申請希望者が実際に資格を満たしているのかどうか、役所が厳格かつ慎重な確認作業を重ねるのは至極もっともではないか。

 POSSEはまた、会見を開いた意図について、

「女性の希望というより、3月12日に私たちが『生活保護妊娠出産ホットライン』を開設するとお知らせするのが趣旨です。最近、妊婦の方からの相談が増えているので、その一例として市原市の事例を発表したわけです」(同)

 団体の活動をPRする格好の材料となったのであれば、それはすなわち「ビジネス」と呼ぶべきであろう。それでも事務局長は、

「私たちは基本的に会費と寄附、そして財団など民間の助成金で団体を運営しています。生活保護に関する相談は2009年頃から始め、現在は年間1000件ほど受けていますが、これについてはビジネスではなく、すべて無料で行っている。当然、女性からも手数料などは頂きません」

 と言うのだが……。

 関西地方で長らくケースワーカーを務めた碇井伸吾氏は、

「生活保護の受給資格の判断には相当な時間を要するので、申請前の作業が肝心です。最初の面談でできるだけ詳しい状況を把握し、こちらも正しく制度の説明をする。お互い万全の状態で最良の解決策を探すわけです。初対面の職員に個人的な話をしたくないのはわかりますが、時には役所側も突っ込んだ質問をせざるを得ません」

 としながら、こう指摘するのだ。

「最近は初回からNPO法人のスタッフを連れてくる人が増えました。生活保護申請というのはごくプライベートな事柄であり、基本的には1対1で話し合いをすべきです。親類はおろか第三者の同席は決して好ましくないのですが、仮にご本人が『この人に立ち会ってほしい』と希望した場合、我々は断るすべがないのです」

特集「フィリピン人妊婦とお役所を追及! ドヤ街からは労働力を奪った! 『生活保護』でメシを食うNPOは正義か」より

週刊新潮 2017年3月23日号掲載

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