経産省のお墨付き ”ホワイト企業”リストに「東レ」の名がない一大事

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2020年までに500社

 黒字は大歓迎だが、ブラック企業の烙印を押されるのはまっぴら御免。そんな企業の本音を汲んでか、経済産業省は2月21日に“ホワイト企業”のお墨付きを与えた。認定されたのは330社。だが、そのリストに載ってしかるべき企業の名が見当たらないのだ。

 経産省が、今年からスタートさせたのは「健康経営優良法人2017」制度。企業は、経産省から送付された“健康経営度調査”に回答後、“ホワイト企業”認定基準クリアの有無を確認し、申請する仕組みだ。経産省ヘルスケア産業課によれば、

「大企業部門の認定は、『ホワイト500』と名付けました。“ホワイト”はブラック企業の対極を意味し、“500”は2020年までに500社以上を認定したいとの考えから。認定企業のメリットは人材確保で優位になり、金融機関からの金利優遇を受けられる点などが挙げられます」

“ホワイト企業”に認定されたメーカーの人事労務担当者がいうには、

「ホワイト500は経産省と、経団連が中心になって設立された『日本健康会議』との共同認定。お墨付きを得られれば企業のブランド価値が高まり、取引上のメリットも期待できる。ですが、“旗振り役”の1人である、榊原さんの会社が認定されなかったのはなぜでしょうか」

 榊原さんとは、経団連の榊原定征会長(73)のこと。“認定リスト”を見ると、三井住友フィナンシャルグループを始めとした3メガバンクや伊藤忠商事、資生堂など錚々たる企業が名を連ねている。が、榊原会長の出身企業である東レの社名がないのだ。

■電通を厳しく批判

「確かに、経団連会長の出身企業が認定されていないのは一大事ですね」

 こう苦笑するのは、全国紙の経産省担当記者だ。

「榊原会長は昨年11月の記者会見で、電通の女性新入社員が自殺した問題に触れ、“過労死は絶対に起こしてはいけない。電通の経営陣には是正を求める。トップが、長時間労働是正でリーダーシップを発揮することが重要”と、電通を痛烈に批判していました」

 その榊原会長のお膝元である東レは、シェア32・9%を占める繊維業界のトップ企業だ。従業員数は7223人で、平均年齢36・9歳。社員の平均年収も約681万円と決して悪い金額とはいえない。繊維業界に詳しいアナリストの分析では、

「東レは、業界でも風通しの良い会社として知られています。社内では部長、課長と肩書ではなく、“さん”付けで呼ぶ社風。出産後に復職する女性も少なくなく、決してブラック企業ではありません」

 一方、経済ジャーナリストの福山清人氏は制度自体に違和感を覚えるという。

「労働環境が整備され、就労時間が短く、完全週休二日制で、給料が高い。これが社員にとって“良い会社”ですが、経産省が掲げるのは企業のメリットばかり。そもそもホワイトか、ブラックかを決めるのは役所ではなく、そこで働く社員だと思います」

 リストに入らなかったのは東レなりの遠慮があったのか。広報室に聞くと、

「ホワイト500に選出されなかったからといって、ブラック企業とはいえないのではないでしょうか」

 と、ご立腹の様子だが、後日、改めてこう答えた。

「担当者によれば、アンケートには回答しましたが、申請するのを失念していたそうです。来年こそ認定されるように頑張ります」

 榊原会長の任期は来年6月まで。くれぐれも、次回はお忘れなきよう。

週刊新潮 2017年3月9日号掲載

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