中国からロンドン1万2000キロ “新シルクロード”列車を迎えた微妙な空気

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気長に機を待つ(写真はイメージ)

 世界最長のシベリア鉄道9297キロを遥かに凌ぐ1万2000キロを踏破、国家百年の計を担った列車が初めて着くとあれば、楽隊のファンファーレに紙吹雪、歓迎式典の一つもあってよさそうなものだが、至って静かな到着だったのだ。

「1月1日に34輛分の商品を載せた列車が中国の義烏市を出発、18日に中国の“一帯一路”構想では終点の一つであるロンドンに初めて到着しました。が、中国本土でも英国でも反応は微妙でした」(国際部記者)

 カザフスタン、ロシア、ポーランドを通って欧州に入った貨物は、途中、線路幅の違う国ごとに列車を乗り換え、最終的には英仏海峡トンネルからイギリスに。

「“新シルクロード”とも呼ばれる一帯一路構想は、豊富な資金をテコに、中国を中心とする壮大な世界経済圏を確立するのが目標です。同時に、国内企業の深刻な生産過剰を解消するためとも言われています」(同)

 聞き慣れないが、義烏市は実は世界的雑貨都市。貨物も大半が雑貨や日用品だ。

「1年前なら、もっと歓迎されていたでしょうね」

 とは英国在住の国際ジャーナリスト、木村正人氏だ。

「英国は人民元建て国債を30億元(約500億円)も発行したり、米国が牽制する中、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)参加をG7で真っ先に表明するなど、英中関係はまさに“黄金時代”でした。が、昨年6月に決まった英国のEU離脱で様相は一変。英国は今や欧州と新たな関係をどう築くかで手一杯、中国どころではないのです」

 中国問題が専門の拓殖大学教授、富坂聰氏も言う。

「中国にとっても英国のEU離脱は想定外だったはず。中国の狙いは英国を味方に一点突破、EU市場に大展開することでしたが、英国とEUの関係が定まるまでは様子見でしょう」

 待つのは中国の得意技。その間も野望を載せた列車は着々と走り続けるのだ。

週刊新潮 2017年2月2日号掲載

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