アニータ、国際指名手配のチリ人男は「彼は逮捕されないかも」 筑波大生失踪事件を語る

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■アニータが語った「チリの事情」と「14億横領夫の出所」(上)

 日本一有名なチリ人といえばこの人だろう。夫が引き起こした「巨額横領事件」で日本中を敵に回したチリ人妻のアニータ・アルバラード(44)。筑波大生殺害容疑でチリ人の男が国際手配された今回の事件、そして横領夫の現在について彼女が語った内容とは――。

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取材に応じたアニータ

「今回の事件については、報道されていることしか知らないけれど、全くひどい話ね。あってはならないことが起こってしまった……」

〈そう語るアニータ・アルバラードの名が突如として日本で知られるようになったのは、2001年のことだった。青森県住宅供給公社(09年解散)に勤めていた夫の千田郁司氏(59)が14億円を横領したとして逮捕。アニータがそのうち8億円を貢がせ、母国チリにプール付きの豪邸を建てていたことが発覚したのだ。“もらったお金を返すつもりはない”――アニータはそう嘯(うそぶ)いたが、結局その後、豪邸は競売にかけられ、約7000万円が弁済にあてられた。この事件で日本中を敵に回した彼女は、なぜかチリでも一躍有名人となり、タレントデビュー。現在もテレビ番組やイベントの司会に引っ張りだこだという。無論、横領事件の関係者にとって、アニータは今も忌々しい存在であるに違いない。が、彼女が日本とチリ、双方の事情に通じているのも事実。フランスの大学に留学中だった筑波大生の黒崎愛海(なるみ)さん(21)を殺害したとの容疑でチリ国籍のニコラス・セペダ・コントレラス(26)が国際手配された今回の事件、彼女はどう見ているのか。〉

「ニコラスが犯人だという証拠がはっきり出たとしても、もしかしたら彼は逮捕されないかもしれないわね。残念ながらチリって未だにそういう国なのよね。一部の特権階級の人たちは、みんな裏で繋がっていて、本人や、その親族が何か悪事を働いたとしても、お互いにかばい合うの。

 今から2年前かしら、こんなことがあったわ。ある政治家の息子が、飲酒運転のあげく、人をはねてしまった。そして、はねられた人は亡くなってしまったの。でも彼は、書類に署名をしただけで、お咎めなし。もちろん彼のお父さんもそのまま政治家を続けているわ」

■「日本では信じられないかもしれないけれど…」

〈アニータへのインタビューは、サンティアゴにある彼女の母親の自宅で行われた。そこは、ニコラスが住んでいた高級住宅地から車で30分ほどの距離にある低所得者の居住区域だった。〉

「容疑者のお父さんはチリで一番大きな携帯電話会社の幹部でしょう? 超のつく富裕層よ。警察や政治家とも間違いなく繋がっている。どんな証拠が出てこようとも、チリの警察が彼を積極的にフランスの警察に引き渡すなんてことはないでしょうね。日本では信じられないかもしれないけれど、それがこの国の現実。

 でも、ラ・セレナにある、彼のファミリーが住むマンションには、今も日本のマスコミが大勢押しかけて、張り込んでいるんでしょう? それが唯一の希望じゃないかしら。日本のマスコミがそうやってプレッシャーをかけ続ければ、いかに特権階級といえども、国としてきちんと対応しなければならないという空気になるでしょう。日本のマスコミが頑張っているうちに、何らかの決定的な証拠が見つかれば、逮捕の可能性も出てくるかもしれない。それは時間との戦いね」

■「チリ人の男って…」

〈フランスの検察当局はニコラスを「極めて危険な人物」としており、ストーカーのように黒崎さんに付きまとっていた、との証言もある。また、昨年9月にはネット上に一方的に動画を公開、「代償を払え」などと彼女を脅迫していた。〉

「チリ人の男って、本当に束縛してくるのよ。とにかく、付き合っている女性は自分のものだという感覚。それが勝手なことをしようものなら、カンカンに怒り出して、暴力を振るうこともある。私もそういう男と何度か付き合ったことがあるわ。その彼が知らない男、といっても単なる仕事関係の人、と会っただけで暴力を振るわれたこともあった。ただ、私は気が強い女だから、殴り返してやったけどね。でも大半の女性は、男のいいなりになってしまう。

 特に女を束縛したがるのは、富裕層の男よ。彼らは幼い頃から、お母さんにめいっぱい甘やかされて育っているから、とってもワガママなの。とにかく何でも、自分の思い通りにならないと気が済まない。自分が付き合っている女が、自分が知らない男と話すだけでも、激高するのよ。

 ニコラスなんて、まさにその典型じゃないかしら。報道を見ていると、行方不明になっている日本人の女の子は、賢くて、社交的で、活発な子だったんでしょう? フェイスブックにもたくさんの友達がいたんじゃないかしら。

 おそらくニコラスが知らない男とも、交流がいっぱいあったのでしょう。そういうことの一つ一つが、彼を怒らせたのよ。独占したくてしょうがなかったのよ。でも彼女は彼のお母さんじゃないもの、全部いいなりになんてならない。彼はそれがどうしても我慢できなかったのよ。

 付き合っているだけでそうなんだから、結婚したらもっとひどいわよ。基本的にチリでは、男が家計を仕切っているの。だから女が自分の好きなようにお金を使うことは許されない。例えば、友達とお茶に行きたいからお金を下さい、と頼んでも、その相手は誰だ、いつ帰ってくるのか、何を話すのか、と執拗に聞いてくるわけ。それで気に食わなければお金を渡さない。ね、ひどいでしょう? 私、日本にいた時に驚いたのが、日本の女性たちって、奥さんどうしでカラオケに行ったりしているでしょう。ビックリしちゃったわよ。そんなことが許されるんだって。チリだったら絶対に許されないと思ったわ」

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 アニータが語った「チリの事情」と「14億横領夫の出所」(下)へつづく

特集「日本一有名なチリ人女性に『筑波大生失踪事件』を訊く!『アニータ』が語った『チリの事情』と『14億横領夫の出所』」より

週刊新潮 2017年1月26日号掲載

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