中村俊輔、4000万円を棄ててまでマリノスを出た事情

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中村俊輔

 生涯巨人を貫いたミスターは長嶋茂雄。横浜F・マリノスのミスターといえば、中村俊輔(38)である。もっとも“ミスター・マリノス”は突如、ジュビロ磐田への移籍を余儀なくされた。同時に1億2000万円の年俸も棄てたそうだから、余程の事情があったようだ。

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 マリノスは中村の移籍に関し「多大なるご心配と不安をおかけすることとなりますが……」と、まるで不祥事を起こしたようなコメントを出している。チームも自らに非があると感じているらしい。

 中村移籍の事情を語るのは、スポーツ紙記者。

「ここ数年、マリノスは慢性的な経営難に陥っていた。で、いよいよまずいとなった時、手を挙げたのがイングランド・プレミアリーグのマンチェスター・シティなどを持つシティ・フットボール・グループ(CFG)でした。彼らは2014年5月、マリノス株を20%取得し、同年12月にフランス人のモンバエルツ氏を監督に据えたのです。当初、チームはCFGと合議制で物事を決めていたが、昨年7月、チーム統括本部長に利重孝夫氏が就任すると、CFGの意向が直接、運営に反映されるようになった。現在、彼らはベテランで高コストの選手を整理しようとしています。俊輔もその煽りを受けたということです」

 全盛期を過ぎたとはいえ、芸術的なフリーキックはまだまだ健在。しかも、マリノスでは一番人気の選手である。16年の年俸は1億3000万円で、J1の全選手中2位であった。

 スポーツ紙記者が続ける。

「俊輔が退団した直接的な原因は、モンバエルツ監督との不仲です。元々、俊輔はピッチ上の監督で、戦術的なリーダーだった。が、モンバエルツが監督に就任すると、若手が起用されるようになり、徐々に俊輔の出番は減った。監督は、練習でも彼と他の選手がコミュニケーションを取れない雰囲気を作っていました」

■「私のチームだ」

 中村をよく知るサッカー評論家の佐藤俊氏も言う。

「一サッカー選手として、試合に出られないのは悔しい。だけど、ずっとキャプテンを任されてきた中村君は、自分のこと以上にチームを気に掛けていた。自分が外れて結果が出るならいいが、成績は一向に上がらない。そこで監督に何度も彼なりの提案をしたそうですが、その度に『マリノスは私のチームだ』と突っぱねられた。フランス人は非常に頑固なところがありますからね。独裁者然として振る舞う監督の姿に嫌気がさし、心が折れたそうです」

 モンバエルツ監督の続投が決まったのは昨年11月。この時点で中村は、もうマリノスには居られないと思った。そこへ、ジュビロ磐田が声を掛けたのだ。

「マリノスは、俊輔に年俸1億2000万円の1年契約を提示した。それに対し、ジュビロは年俸8000万円の2年契約だった。4000万円を棄ててでもジュビロを選んだということは、もはやカネの問題ではないということでしょう」(先のスポーツ紙記者)

 佐藤氏が指摘する。

「中村君が移籍することで、チームは大きな痛手を受けると思います。彼がマリノスで輝いていたのは90年代末から02年です。その頃のファンの多くは今、家族持ちになり、応援に来てくれている。こうした人々が離れていくのは由々しき事態でしょう」

 ドライな外資に、マリノスファンの心は分かるまい。

ワイド特集「最後の福袋を買い占めろ!!」より

週刊新潮 2017年1月19日号掲載

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