相談窓口に盗聴器…「信金中央金庫」会長のお膝元で怪事件

ビジネス 企業・業界

  • ブックマーク

Advertisement

“仕事始め”の1月4日、東京・立川市内のホテルで多摩信用金庫の新年会が開催されていた。壇上に立った佐藤浩二会長(74)は、“今年の冬は暖かい。やはり冬は寒くないと調子が出ない”と挨拶。それを聞いた役職員から愛想笑いも起きなかったのは挨拶のつまらなさだけでなく、昨年末に起きた事件の深刻さを物語っていたのかもしれない。

 新年会の会場の外で2人の男性が佇み、周囲を憚るような小声で言葉を交わしていた。

「例の事件は、お前の支店でも話題になっているのか?」

 管理職と思しき中年男性の問いに対して、若手職員が頷きながら、

「支店では事件の話で持ち切りです。外部だけでなく、内部犯行説も浮上しているので、みんな疑心暗鬼になっていますよ」

 その事件が起きたのは、多摩信金の府中支店。去る昨年12月19日、府中支店の職員が店内で不審物を発見し、地元警察に通報したのだった。30代の職員がこう囁く。

「通報翌日、警察が不審物を盗聴器だと断定したのです。盗聴器の設置場所は、支店1階の顧客相談窓口“すまいるプラザ”のカウンター下のコンセント差込口。そのカウンターには、資産運用の相談に訪れる顧客も少なくありません。特に、府中支店には土地持ちの資産家が多い。彼らの個人情報が外部に漏れていたらウチの信用は地に堕ちてしまいます」

 盗聴器設置に驚愕した多摩信金は、全ての支店長へ事件の概要をFAXで伝える一方、各店内に不審物がないか調べるように指示したという。

■多発する不祥事

 犯人は誰で、一体何の目的で盗聴器を設置したのか。多摩信金の幹部によれば、

「今のところ、ある男性職員が疑われています。というのも、以前彼はパワハラ被害を本部に届け出て、逆に叱責された。その後、ツイッターで役員への批判が呟かれたことで、“呟き犯”の嫌疑がかかっているからです」

 支店内には防犯カメラを設置しているはずだが、

「防犯カメラの画像は、2年間の保存義務がある。府中支店は2年前の2月に改装オープンしたばかりでデータは残っていますが、今のところ犯人特定に繋がるような画像を見つけたとは聞いていません」(同)

 つまり、確たる証拠もなく、その男性職員は疑われているわけだ。

「職員の間では、本部が設置したとの話も実しやかに囁かれています。ここ数年、うちは不祥事が多い上に内部情報が筒抜けになっている。それで本部が“犯人探し”のために盗聴器を付けたとしても不思議ではない。そう考える職員も少なくないのです」(先の職員)

 確かに、本誌(「週刊新潮」)が報じた佐藤会長の指示による菅直人元総理の実母への情実融資問題に始まり、プレミアム商品券の職員チョロマカシ事件など不祥事が多発している。

 多摩信金の監督官庁は関東財務局。その上部機関の金融庁幹部も呆れ顔だ。

「昨年6月、佐藤さんは業界団体『信金中央金庫』の会長に就いている。信金中金の運用額は約34兆円で、第一生命のそれに匹敵する巨大金融機関。そのトップのお膝元で、なぜこうも不祥事が絶えないのか。管理、監督能力が問われても仕方ないでしょう」

 多摩信金経営戦略室の渋谷博之室長に聞くと、

「府中支店で盗聴器が発見されたのは事実です。捜査の関係上、詳細はお答えできません」

週刊新潮 2017年1月19日号掲載

メールアドレス

利用規約を必ず確認の上、登録ボタンを押してください。