トランプ大統領、対中国政策で日本孤立の恐れ

国際週刊新潮 2017年1月12日号掲載

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 昔ながらの正月遊びの定番と言えば、いろはかるたに百人一首。今年はそこに、「トランプゲーム」が加わったという……。2017年のキーパーソンは、何と言っても米国のドナルド・トランプ新大統領(70)だ。過激な発言で世界を揺るがす暴れん坊となるのか、さすがに現実的な対応を取って各国は胸を撫で下ろすことになるのか。新春の「トランプ占い」である。

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ドナルド・トランプ氏(70)(FOX NEWSより)

「オバマケアは完全撤廃ではなく、一部引き継ぐ」

 昨年11月の大統領選勝利後、トランプ氏はかつての発言を軌道修正し、今月20日、大統領に正式就任すれば、一層、「大人」になるのではないかとの見方が広まりつつある。しかし、

「そうした楽観論に私は与(くみ)しない。とりわけ恐れているのは、米国の対中国政策が日本に及ぼす影響です」

 と、警戒感を顕(あらわ)にするのは、国際政治学者で京大名誉教授の中西輝政氏だ。
「トランプは中国に強硬な態度を取るであろうという現時点での見立ての大きな要因は、昨年12月2日に彼が台湾の蔡英文総統と電話会談したことです。あわせて、フォックス・ニュースのインタビューに『どうして“ひとつの中国”政策に縛られなければいけないのか分からない』とトランプは答えた。こうしたことから、彼は中国に対して強く出ると見られているわけですが、それは早合点です」

 確かに、とりわけ日本のメディアが早合点をしがちなのは、昨年末の日露首脳会談でも実証済み。なにしろ、〈北方領 2島返還が最低限 政府、対露交渉で条件〉などと報じていた新聞があったほどである。

 中西氏がトランプ氏の「対中本音」を続ける。

「蔡総統と電話会談した同じ日に、中国本土ではヘンリー・キッシンジャーが習近平国家主席に会っています。キッシンジャーは、言わずと知れた1971年の『ニクソン・ショック』の下準備のために極秘訪中した当時の大統領補佐官であり、米国随一の親中派。そして彼は、共和党のお歴々がトランプ批判を展開していた頃から何度もトランプと面会し、トランプは彼を師と仰いでいるとも言われている。したがって、トランプ政権の外交の軸は、トランプ―キッシンジャー・ラインにあると言えます」

■共和党政権の伝統

 米国在住歴が長かった国際ジャーナリストの堀田佳男氏もこう懸念する。

「昨年5月にオバマ大統領が広島を訪問した際、トランプは、『大統領は日本滞在中にパールハーバーの奇襲について議論したのか?  何千人もの米国人の命が失われた』とツイッターに投稿しています。トランプの本心は、『日本人は卑怯な国民』というものでしょう。彼が日本を本気で守る気がないと分かれば、中国は尖閣諸島に本格的な上陸を仕掛けてくる可能性があると思います」

 中西氏が総括する。

「対中強硬路線から対中宥和路線に転換するのは、ニクソン政権、そしてレーガン政権、つまり共和党政権で繰り返されてきたことでもあります。それに気付かず、安倍政権が『米国の後ろ盾があるのだから』と、対中強硬の前のめり姿勢を取ってしまうと、トランプに梯子を外され、日本が孤立する恐れがあるのです」

 トランプ氏は、やはり日本にとって「ジョーカー」となりかねないようである。

特集「日本が頭を抱える4つの最悪シナリオ2017」より